2020年も残すところあと1カ月を切ったが、本来であれば決着がついているはずのアメリカ大統領選はいまだトランプ大統領が敗北を認めない、という異例の事態が続いている。今回の選挙では主に新型コロナウイルス対策の失敗により、トランプ大統領が再選する可能性は限りなくゼロに近いものとなっているが、これは単純にトランプ主義が掲げる国家主義・移民排他主義という「ブランド」が否定されたものではない。
パンデミックによる23万人以上の死者と1日の記録的な感染者の数が10万人に届いていなければ、世界はもう後4年、場当たり的な政策や怒りに満ちたつぶやきと付き合う準備をしなければならなかった。
コロナ前までは順風満帆だった
今回の大統領選挙では、エジソン・リサーチの出口調査によると52%の有権者が、パンデミック対策は経済より重要だと答えているが、アメリカで感染者が2月に初めて見つかる前までは、トランプ政権は力強い経済成長、記録的な低失業率、そして賃金上昇を実現していた。そして、大統領選においても過半数に近い有権者はトランプ大統領の経済政策を評価していた。
岩盤と呼ばれるトランプ大統領の支持者は、保守派の終身任期の連邦最高裁判事に、保守派のエイミー・コーニー・バレット判事を指名したことや、巨大な減税、改正憲法第2条(銃の保持を保証する)の厳守を評価。支持者の中にはトランプ大統領の白人至上主義的、および移民排他主義的で分断的な言動を称賛している人もいた。
背景には、人口動態の変化により、あと20年あまりで白人が少数派になり、これまで保たれていた「優位的」な立場を失うことへの恐怖感があるとされている。
「コロナがなければ、トランプは多分勝っていた。おそろしいが、間違いない」と、カンザス州元上院議員のウイント・ウインター氏は言う。同氏は共和党の中道派で、時に民主党の候補を応援することもある。
「アメリカには、潜在的な非常に強い人種差別思考がある。自身が少数派になる恐れがある人が将来を心配し、自分と見た目が違う人たちに対して厳しくしている。トランプは国の最悪なところを表にできるようにしてしまった」
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