トランプ大統領がまだ「敗北宣言」をしない背景 負けを簡単に認められないほどの存在になった

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トランプ大統領は、民主党とタッグを組んで医学および科学的な知見を尊重し、より徹底したコロナ対策が取れたはずだ。経済対策については民主党とともに失業手当や企業の雇用維持などに向けて総額2兆ドルを投じた。選挙数カ月前に予算が尽きたものの、追加対策は行わなかった。

それどころか、専門家の警告を無視して感染拡大の危険性を軽視し、マスクやソーシャルディスタンシングといった対策を徹底しないまま、バーやレストラン、店舗、学校などの再開に踏み切ったのである。

トランプ大統領自身もマスクを着用しないことで政治的なアイデンティティーを示した。民主党の集会では参加者はマスクをし、社会距離を保って、野外かオンラインで展開。一方、共和党はほとんどマスクをせず、社会距離をあまり保たず、室内のイベントも開催していた。

民主党は上院、下院とも予想以上に苦戦

現役大統領が負けるのは1992年以来だが、それでもトランプ大統領は2016年と比較すると1100万人以上の新たな共和党支持者を得ることに成功している。メディアや世論調査、一部の共和党員までもバイデン氏が勝利し、上院まで民主党が勝つと予想していたにもかかわらず、だ。

民主党が上院で勝利することができれば、「ねじれ」状態は生じないはずだった。ところが、民主党は100議席ある上院で2議席しか増やせず、今回の選挙では共和党が50議席、民主党は48議席にとどまっている(ジョージア州の2議席は来年1月に決選投票が行われる予定で、同議席数の場合は副大統領候補のカマラ・ハリス氏が決定する)。大統領が属する側の党は中間選挙で苦戦することが多く(2018年の共和党がそうだった)、このままでは2022年の選挙で共和党が下院の過半を占める可能性も否定できない。

一方、下院では過半数は維持したものの、議席を失っている。

今回の選挙では民主党は、共和党による執拗なまでのアグレッシブなメッセージ攻撃に悩まされた。それは、共和党下院選挙対策委員会の委員長が党員向けのメールで11月10日に書いた通り、今回の選挙は「自由な共和党対過激な社会主義的な民主党」である、といったものだ。

例えば、ミズーリ州のマイク・パーソン知事は地元での演説で、同氏の対立候補のニコル・ギャロウェイ氏へ票を投じることは「社会主義」に票を入れることと同じで、同氏が当選すれば軍および警察の予算をカットする可能性があると強調した。

「われわれは今、人生で最も重要な事態に直面している。それは自由を選ぶか、社会主義を選ぶか、という事態だ。11月3日はそれに尽きる。どちらの道を歩みたいのか。通りの向こうでデモをしている人々は、社会主義の扉を開けようとしている」

こうしたメッセージは実際、多くの人に響いた。ミズーリ州のトラックパレードに参加していたマットと名乗る男性は、「民主党が提案しているいくつかの政策は控えめに言って社会主義的、実際のところは共産主義的だ」と話す。

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