こうした中、共和党は中西部のいくつかの州で事前予測を覆す展開を見せた。例えば、ミズーリ州の隣、アイオワ州では世論調査をひっくり返し、トランプ大統領がバイデン氏に8.2ポイント差をつけて大勝、上院選でも共和党のジョニ・アーンスト上院議員が、民主党候補に6.6ポイント差をつけて勝利した。
またカンザス州は接戦になるとみられていたが、ふたを開けてみれば、トランプ大統領の熱狂的支持者のロジャー・マーシャル下院議員が民主党候補に2ケタの差をつけて勝っている。
予想外の"苦戦”を受けて、今回ギリギリ再選したアビゲール・スパンバーガー下院議員(バージニア州)は、選挙後の電話会議で左派および革新派の民主党員を猛烈に非難。「二度と社会主義という言葉を口にするな。また今回のような選挙戦を展開すれば、2022年にズタズタにされる」。
トランプ大統領は今後も「黒幕」
トランプ大統領はカルト的な支持を得ており、今回でホワイトハウスを去ったとしても、2024年の大統領選を含めてこれからも「黒幕」となることは間違いない。「トランプは向こう何年も人気と影響力を持つ共和党政治家であり続けるだろう」とトランプ大統領に2016年の共和党予備選で敗れた上院議員のマルコ・ルビオ上院議員は話す。
今もってトランプ大統領が敗北を認めていないことは、1月に行われるジョージア州上院の決戦投票は共和党にネガティブな影響を与えないだけでなく、2024年の再出馬やテレビ番組を通じて影響力を持ち続けるなど、身の今後のキャリアも考慮した上でのことのようだ。
ただ、仮に民主党が上院で過半を握れない場合、バイデン氏が多くの法案を通すのは非常に難しくなるだろう。例えば、外交政策については、トランプ時代に行われた中国に対する厳しい政策や、日本や韓国に米軍駐留費の負担増を求める姿勢などは共和・民主両党でも支持する向きは少なくない。
ただし、バイデン氏は例えば、中国の覇権主義に対してアジアやヨーロッパの国々と協力して立ち向かう道を選ぶだろう。一方で、財政赤字や債務残高が記録的な水準に膨らんでいる中、日本などの同盟国に対して防衛費の負担増を求める姿勢は変わらないとみられる。
もっとも、バイデン政権は当面は、コロナ対策に手一杯で新たな防衛や貿易政策に手をつけられる状態ではないだろう。バイデン氏にとって最も重要な課題はコロナの収束と国内の経済対策であり、それが落ち着いてやっと同盟国との本格的な関係修復に取り掛かれるのではないか。
2020年はトランプ大統領の全面的否定にはならなかった。2024年のアメリカ大統領選に向けては、例えば人種差別や移民排他主義を声高に叫ぶのではない、より「賢い」トランピズムの継承者が出てくることも考えられる。アメリカや世界は今後も警戒し続ける必要がある。
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