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〈専門家に聞く〉「マンガワン問題」で小学館に問われる責任 聖域化する「編集」の現場…メディア企業に通じる構造的難題とは

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蔵元左近(くらもと・さこん)/1975年生まれ。2002年一橋大学院法学研究科修士課程(国際法専攻)を修了。04年弁護士登録、10年米国ニューヨーク州弁護士登録。日、米、シンガポールでの法律事務所勤務を経て23年蔵元国際法律事務所を設立。一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)共同代表理事(撮影:尾形文繁)
小学館の漫画アプリ「マンガワン」編集部が、作品を連載していた男性漫画家の性加害を把握しながら、別のペンネームで新連載の原作者に起用していた問題が波紋を広げている(詳細はこちら)。
北海道内の高校で講師も務めていた男性は、2020年に児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で逮捕・略式起訴され、罰金刑を受けた。22年には被害者女性が高校1年生のときから性加害を行っていたとして提訴され、札幌地方裁判所は今年2月の判決で、1100万円の支払いを命じた。
男性が連載していた漫画は、逮捕前後に体調不良を理由に休載されたが、その後マンガワンの担当編集者が被害者との和解協議に加わり、連載の再開中止の要求撤回や、事件の口外禁止などを提案していたことも訴訟で明らかにされた。
一連の経緯をめぐってSNSなどで批判が広まると、小学館は男性が原作を手がけた作品の配信を停止し、第三者委員会を設置する方針を発表。3月5日には、小学館の取締役が被害者に謝罪し、再発防止を約束したという。小学館に問われる責任とは何か。そして、どのような再発防止策が求められるのか。「ビジネスと人権」分野の第一人者でもある蔵元左近弁護士に聞いた。

確認体制が不十分だった可能性

――小学館は和解交渉への会社ぐるみでの関与を否定し、加害者がペンネームを変えて連載を再開していたことも、札幌地裁の判決後にマンガワン編集部から報告を受けて初めて確認したとしています。この事件における小学館の責任をどのように考えますか。

小学館が直接指示を出した、あるいは状況を知りながら放置していたという事実が認められないとすると、法的な責任は認めにくいと思われる。

ただし、「ビジネスと人権」に基づく社会的責任は別途発生しうる。ビジネスと人権の観点では、企業は自社の事業活動と直接的な関連性がある人権侵害、または人権侵害のおそれに対して、事実を適切に確認し、責任ある対応を講じて問題の是正に努めることが求められる。

小学館は、担当編集者から法務室に和解協議について相談があった際に、弁護士への委任を促すよう指示したとしており、それ自体は不適切とは思わない。ただ、仮に法務部やコンプライアンス部門が和解協議に積極的な関与をしたわけではなくとも、(今回の性加害事件が)かなり重大な事態であることは間違いない。少なくともその後の状況を継続的に確認するなど、企業としての適切なフォローアップが求められていたと考えられる。

また、加害者の連載復帰を小学館の経営陣が把握していなかったという事実は、編集部の状況を平時から把握・確認する体制が不十分だったことを示しているのではないか。

次ページ小学館に求められた「発想の脱却」
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