業績が良くなる会社に共通する「クチコミ」とは 社員のクチコミデータと業績との相関を分析

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続いてROAが相対的に低い企業群の分析だ。

低迷企業では、「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の士気」のスコアが高いと、翌期の「ROA」は上昇する傾向にあった。

低迷企業の中から、「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」「社員の士気」のスコアが高く、翌期の「ROA」が改善している会社のクチコミは以下の通りだ。

業績回復には研修やキャリアの柔軟性が重要

「キャリア開発に時間もお金もある程度かけていると思う。研修もタイミングで全員参加のもの、自分で手を挙げて参加するもの。さまざまな種類の研修が用意されている。また上長も研修への参加を促してくれる」(海運業、営業、在籍10~15年)

「大企業がゆえいろいろなキャリアを歩めることができる。また、自分から手を挙げて別の部署へのチャレンジをすることもできる。上司を見ると、さまざまなキャリアを歩んでいることがわかり、かなり参考になる。また、先輩も真摯にキャリア相談にのってくれる」(化学、開発製造、在籍3~5年)

低迷する財務状況から脱している会社においては、「短期的な組織強化だけではなく、人材育成による長期的な組織づくり」が、現状を打破し、財務状況を好転させることにつながっていると考察をした。

今回の分析からわかったことは、あくまでもクチコミから想像するその会社の組織や人の状態であるが、業績好調時に作るべき組織状態と、業績悪化時に作るべき組織状態は大きく異なるということがわかる。業績が好調なときは「風通しの良さ」などを意識し、低迷している場合は、「法令遵守意識」「待遇面の満足度」「人材の長期育成」などを意識すべきだろう。

現在は未曾有の環境下で経営をしている企業が多く、これまでとは大きく経営状況が異なっている会社がほとんどのはずだ。経営についても、これまでのやり方を当たり前と思って組織改革に取り組んではならない。そのときどきにあわせた改革が必要になってくる。

一方で就職や転職を考えている方も、単純に業績が伸びている会社はよく、そうでない会社はよくない、といった括りで転職・就職をすると痛い目を見るだろう。その会社の内情や、組織状態がどのようになっているかを良く調べたうえで、職探しをすることがこの環境下ではとくに大切になってくるだろう。

大澤 陽樹 オープンワーク 代表取締役社長

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おおさわ はるき / Haruki Oosawa

1985年生まれ。東京大学大学院卒業後、リンクアンドモチベーション入社。中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティング事業のマネジャーを経て、企画室室長に就任。新規事業であるインキュベーション(ベンチャー投資)事業やモチベーションクラウド事業の立ち上げ、経営管理、人事を担当。2019年11月オープンワーク副社長。2020年4月より現職。2022年12月、東証グロース市場に上場。

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