「強い人間と自称する人」に熱狂する人々の愚純 ポピュリズムを生み出す下地がつくられる背景

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彼らの魅力は「行動すると誓っていること」にあります(写真:francescoch/iStock)
世界中で右左を問わず先鋭化するポピュリズム、コロナ禍でますます過熱するようになったネット炎上――。なぜ社会の「分断と対立」はここまで加速するのか。失われた30年により経済と人心が荒廃し、「感情の政治」の培養器となりつつある日本の現状を分析した『山本太郎とN国党 SNSが変える民主主義』から一部抜粋・再編集してお届けする。

為政者が用いる新しい言葉の裏側

「コロナ禍は人間性を判定するリトマス試験紙だった」――筆者は、新型コロナウイルスのパンデミックで混乱する状況下で、このような趣旨の記事をいくつかのウェブ媒体で発表しました。当然、判定される対象にはマスコミ関係者も含まれていたのですが、そのように受け止めるマスコミ関係者は驚くほど少なかったと記憶しています。なぜなら、報道姿勢そのものにさしたる変化が起こらなかったからです。

例えば、「新しい生活様式」「ニューノーマル」という言葉――まるでジョージ・オーウェルのディストピア小説『一九八四年』に登場する「ニュースピーク」(国民の語彙や思考を制限し、党に反する思想の根絶を目的とする新言語)のようですが、これがウィズコロナ時代のわたしたちが適応すべきライフスタイルのお手本だとうたっているわけです。

コロナ禍では数々のニュースピークが政府などの為政者の側によって創作されました。「自粛要請」「3つの密」「クラスター」「濃厚接触」「オーバーシュート」……レインボーブリッジと都庁を赤く光らせ、その他の具体的な施策から注意を逸らした「東京アラート」もこれに含まれるでしょう。

為政者がこれみよがしに新しい言葉を用いる場合には、必ず不都合なものを覆い隠す機能を伴っています。しかし残念ながら、多くのメディアはその言葉の意味やそれによって何かが書き換えられたり、もみ消されたりしていることを察知し、批判的な視点で取り扱うということをほとんどしませんでした。

このようなマスコミの劣化ぶりがさらに露呈し、ポピュリズムが暴走する余地は以前とは比べものにならないほど高まっています。

大阪府の吉村洋文知事をめぐる在阪メディアなどの〝祭り上げ方〟が象徴的です。

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