N国党躍進を茶化す人が見落とす「庶民の鬱屈」 面白半分で票が集まったと考えるのは大間違い

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8月1日に初登院した「NHKから国民を守る党」の立花孝志議員(写真:Motoo Naka/アフロ)

「NHKから国民を守る党」(N国党)が参院選で1議席を獲得し、政党要件を満たしたことが世間に衝撃を与えている。7月29日に、日本維新の会から除名され、現在無所属の丸山穂高・衆院議員が入党して2人に増え、翌30日には旧みんなの党代表で無所属の渡辺喜美氏と会派「みんなの党」を結成するなど、話題性だけでなくその党勢も着実に伸ばしつつある。

この現象に対して世間ではテレビ番組の識者のコメントをはじめとして、「茶化したり」「単なるネタ扱い」に終始していたりしている論調があまりにも多いが、それでは本質を見誤る。受信料を支払う人だけがNHKを視聴できる「スクランブル放送」の実施を掲げ、比例代表で98万票超を獲得した事実は重い。

「優先的地位」の既得権益層に対する敵意

この100万人近い人々の「民意」。深層に、自分たちの存在など歯牙にもかけない現状の政治体制に対する絶望や、自分たちの生活実感とかけ離れた「優越的な地位」の既得権益層に対する敵意があるに違いない。

ただし、それは「NHK」という事業体そのものの改革の是非というよりかは、NHKは分かりやすい〝的(まと)〟にされているに過ぎない。「NHK」に象徴される「巨大な既得権益」への反発であり、自分たちのお金を強制的に吸い上げる一方で、自分たちの生き死に対しては一切関心を示さない、目には見えない力に対する拒絶のサインである。無意識に潜むメッセージを一言で言えば、「もう自分たちは黙ってはいないぞ」「混乱の種を国会に送り込んでやる」ということを象徴しているのだ。

数年前、居酒屋でたまに会う中小企業経営者の50代の男性が、突然、ある紙片を目の前に投げてよこした。それは櫻井よしこ氏が『週刊新潮』で連載していた「日本ルネッサンス」というコラムのコピーだった。NHKの「金満体質」を猛烈に批判したもので、偏向報道を行い、受信料収入で巨額の有価証券を買い、職員が国民の平均給与の2.5倍を得ていることを口酸っぱく非難し、最後にスクランブル放送の必要性などを説くという内容だった。

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