その理由は、制作側が、撮影方法やスケジュールなどをコントロールできるからです。特にタレントが登場するものは、さまざまな制約があり、何らかの設定を設けないと番組として成立しません。ところが「YOU」の主役は外国人の素人さんなので、設定は外国人が決めます。何日撮影するか、どこへ行くかも彼ら次第。これは制作側にものすごい労力を要しますので、アメリカだと完全に予算オーバーとなってしまうでしょう。
3つ目の起承転結の「結」がないというのも、「ドキュメンタリーには締めがないといけない」という思い込みが間違いであることを教えてくれます。普通、日本に来る外国人に密着取材というと、必ずまとめのエンディングシーンがあります。他局のドキュメンタリー番組は、どれも「別れのシーン」や「美しい締めコメント」などで終わっているはずです。
ところが、この番組は「ガチ」なので、外国人が密着の途中で連絡がとれなくなったり、帰国してしまったりするのはしょっちゅう。その場合も「密着取材終了」というテロップ1枚と「小さな世界」のテーマソングで終わってしまいます。「えっ、ここで終わり?」と思いますが、「あっ、これガチだもんね」と妙に納得してしまうから不思議です。
そして4つ目が、ゴールデンの番組なのに予算がないことを隠さないことです。通常、ゴールデンの番組は「予算をかけました!」というのをわかりやすく示すために、豪華セットの前に、たくさん芸人さんを並べて、とにかく華やかに見せることに努めます。ところが「YOU」でMCを務めるバナナマンの設楽さんと日村さんを撮影しているのは、小さな会議室。しかも背景のブルーシートは「ガムテープ」で張ってあります(普通はクロマキー撮影用のスタジオなどで撮影します)。
何という手作り感! この番組は、無駄なところに予算は使わず、とにかく面白い外国人の映像を撮るためのロケに、多くの予算を割いていることがわかります。
経営学の世界では、「イノベーションは制限のあるところから生まれる」と言いますが、「YOU は何しに日本へ?」はまさに「低予算」という制限から生まれた革新的な番組です。そしてノープランだけれど、「ガチ」にこだわり、ロケの手間暇は惜しまない。船酔いしながらも漁船でカメラを回し続けたり、富士山を登ったりするスタッフには本当に頭が下がります。芸人さんやタレントさんの話芸に頼りっぱなしのひな壇バラエティショーとは、一線を画すものです。
ということで、しばらく筆者は「YOU は何しに日本へ?」のイノベーションがどこまで進んでいくか、注目していきたいと思っています。
ところで、指差し旅の2人、無事、金沢の「おでん屋三幸本店」に到着したかな~~。放送があったりなかったり、そのあたりも極めて「ノープラン」なこの番組。来週も放送があることを祈るばかりです!
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