テレビ東京の番組が、低予算でも面白いワケ 『TVディレクターの演出術』を書いた高橋弘樹氏に聞く

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テレビ局で規格外のバラエティ番組を作り続けているディレクターが、予算のなさを逆手に取りアイデアと工夫によって「形」にする技術を披露した。

──手掛けた直近の番組は、「世界ナゼそこに? 日本人」のイラン編でした。

この本には、「世界ナゼそこに?日本人」と、地上波時代の「空から日本を見てみよう」のエピソードが多い。「世界ナゼそこに? 日本人」は、秘境で頑張っている日本人を訪ね、ドキュメントバラエティにした番組。それを現在も担当している。

イランには2週間行き、1カ月ほどで番組に仕上げた。すごく反米的な国家で、取材が難しく、1日1~2回警察署に連行された。大統領が代わり、市民は警察の目を気にして多くしゃべらない面もあったが、けっこう生の国紹介が引き出せたと思っている。主人公の女性はイラン人と結婚して現地で弁当店を仕事としている。

有名な人ではなく、スポットライトが当たったことのない素人や、まったく知られてない新しい才能を発見して、その人の魅力を最大限引き出す。今回は、一人の人間を通して歴史が見えてくる。1980年代のイラン・イラク戦争の頃、イラン人が大量に日本に来た。そこで夫になるイラン人に出会って、数奇な運命をたどることになる。法改正で日本のビザの取得が難しくなって、夫とともにイランに渡る。いわば世界の社会史の一コマだ。一つのノンフィクションドラマとしても面白い。

──面白い?

テレビでいう面白いは、「笑える」だけではない。歴史番組や教養番組のように「知的好奇心を刺激される」、ドキュメンタリー番組のように「問題意識を喚起される」、ドラマのように「感動して泣ける」なども、面白いに含まれる。

──視聴者を飽きさせない「三感」が番組づくりには大事とも。

先輩にたたかれながら体で自分なりに編み出したのが、面白さを実際に映像で表す「違和感」、視聴者と一緒にわくわくする「調査感」、うれしさのヤマ場である有益の感情が覚えられる「発見感」の三つを重視した番組づくりだ。普通のものを普通に撮っていては、テレビはすぐ飽きられてしまう。

視聴者は何か違和感を与えたときに「えっ」と注目して見てくれるものだと、重々身にしみた。テレビを見てよかったなと感じる発見感はどうすれば伝えられるか。事実を事実として伝えるのではなく、それをどうやって発見したか、過程を見せることで飽きさせない。視聴者自身が再現するうえでも、調査の過程を見せることは重要となる。この三感を外さなければ、つまらない映像にはならない。

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