(第6回)住宅投資・耐久財と借り入れ・輸入の関係

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 なお、この期間のアメリカの消費には、マクロ経済学でいう「実質残高効果」が働いていたと考えることもできる。ピグーやパティンキンなどの経済学者は、物価が下落すれば名目資産の実質価値が上がるため、消費支出が増えて総需要が増加すると論じた。

この期間にアメリカで生じた消費増は、消費関数が直接に影響を受けたというよりは、「物価下落によって貨幣の実質残高が増加し、その結果利子率が低下して借り入れが増え、総需要が拡大する」というルートで実現した可能性がある。

貿易を通じる国内支出増と世界経済の関係

モーゲッジローンも消費者ローンも08年初めまでは増加を続けた。しかし、金融危機の勃発に伴って、その後減少に転じた。前回の図で示した08年以降の支出の急激な減少は、こうして引き起こされたものである。それまでは増加を続けた残高が減少に転じたのだから、支出には極めて急激で大きな影響を与えた。

ただし、借入残高の減少度合いは、さほど早くはない。09年第3四半期に、やっと07年初めごろの水準に戻ったにすぎない。それ以前の水準に比べると、まだだいぶ高水準だ。したがって、今後も債務の返済が続く可能性があるし、それに伴って消費の減少が今後も続く可能性がある。

次に、アメリカ国内の支出をアメリカの対外取引に関連づけてみよう。

上記の期間の累計で見て、財輸入は7兆5778億ドルであり、うち耐久財輸入が4兆6730億ドルである。したがって、耐久財消費の大部分が輸入によって賄われたことがわかる。また、財輸入額は、住宅投資と耐久財消費の合計8・6兆ドルの9割近い値になっている。したがって、この期間の住宅投資と耐久財消費のほとんどが輸入によって賄われたと考えることもできなくはない。このようなルートを通じて、アメリカの支出は世界経済とつながっていた。

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