しかし、アメリカにおける自動車の供給について次のようなイメージを描くと、このことが納得できる。
アメリカ全体での自動車の購入を1とすると、アメリカのメーカー(ビッグスリー)によって供給されるのが、0・6程度である。残りは外国のメーカーによるものだが、大部分が日本なので、日本メーカーが0・4程度であるとしよう。そのうち、アメリカ国内の工場で生産されるものが3分の2だとすると、全体の0・3弱だ。そして、日本からの輸入は0・13程度になる。これが上記の値(12・8%)に対応している。
そして、アメリカの町を走っている車の4割程度が日本車のマークをつけていることになり、これは日常的観察とも一致する。つまり、日本車のかなりのものは、アメリカ国内の工場で生産されたものであったのだ。
トヨタ自動車が公表しているデータを見ると、海外生産の急拡大があとづけられる。トヨタ自動車の乗用車と商用車の合計生産は、02年においては、国内生産349万台に対して、海外生産は216万台だった。ところが、海外生産は、03~05年において年率17~18%という非常に高い伸びを示した。06、07年には伸び率がやや低下したが、それでも伸び率は年率10%近かった。
このような急激な生産拡大は、1970年代末以降の日本の国内自動車生産でもなかったことである(96年後半から97年前半にかけて対前年伸び率が10%を超えたことがあったが、それ以外の多くの年で10%を下回った)。この結果、09年においては、国内279万台に対して海外358万台になっている。この背景には、アメリカでの大型工場の新設がある。03年アラバマ、06年テキサス、07年インディアナと大型工場の新設が進んだ。
こうした海外生産の急拡大は、いま問題となっているリコールにも深い関係があるのではないかと疑われる。それは急激な生産拡張に品質管理が追いつかなかった可能性だ。とりわけ現地調達された部品について、その可能性がある。国内系列メーカーとの間では緊密な協力ができるが、海外メーカーとの間ではそれができなかったのではあるまいか。
【関連データへのリンク】
・アメリカ資金循環表 (直近発表分)
・アメリカ資金循環表 (ヒストリカルデータ)
・アメリカGDP
・日本貿易統計
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。
(写真:今井康一)
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