松本大社長が問題と感じる総会運営の「助言」

株主総会は誰のために、何のためにあるのか

松本大氏は株主に向き合う経営者の姿勢についても言及した(記者撮影)
今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという前代未聞の事態が明らかになった。問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウンした。だが、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。
この問題を専門家はどう見ているのか。創業者として20年以上にわたって企業のトップを務め、直近では「アクティビストファンド」のマネージャーとしても活動するマネックスグループの松本大社長に聞いた。

アドバイスを無視して総会をやっている

――三井住友信託銀行やみずほ信託銀行が議決権の一部を集計していなかったことが明らかになりました。この件をどう見ていますか。

実際には株主総会の前日に議決権行使書が到着していたのだから、「株主の大切な議決権なんだからちゃんと数えよう」という発想を持ってほしかった。けれども、私はそこ(総会前日の到着分を集計しなかったこと)に悪意があったとは思わない。信託銀行としては、あくまで総会に間に合わせるためにちゃんとカウントしようとしていたと解釈している。

今回のことで信託銀行への信頼が大きく低下したとは思わない。一方で、株主総会に対する信託銀行の姿勢には問題を感じていた。

――どういった問題でしょうか?

株主総会へ向けて、信託銀行とリハーサルをやるのだが、彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける。

私は創業社長でこれまで20回以上の株主総会をやってきた経験があるので、リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている。

だが、通常の社長はアドバイス通りに総会の質問を早めに切り上げようとしてもおかしくない。

――日本の経営者は株主との対話にあまり積極的ではありません。その背景には信託銀行の指導があるということですか。

日本の経営者は顧客に会うことはまったく厭わない。強い批判や要望を出されても、「ありがとうございます」と言って話を聞く。

しかし、相手が株主だと「会いたくない」と言う経営者が多い。これは経営者の人格の問題ではなく、「そういうことはやらないものなんです」と(株主対応の)担当社員や信託銀行が言うので、腰が引けているケースが多いように思う。

上場企業の経営者の中には社長就任時に「開かれた株主総会にして、大勢の株主の意見を聞きたい」と思う人は大勢いるはずだ。だが、株主総会はなるべく穏便に、滞りなく運営したほうがいいという担当者や信託銀行の意見に従ってしまう。

本記事の続きはこちら。『東洋経済プラス』では「株主総会の不都合な真実」として、各分野の専門家のインタビューを含む5回の連載を配信しています。

総論/株主軽視の総会は通用しない

インタビュー①/マネックスグループ・松本大社長
「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」


インタビュー②/フィディリティ投信・三瓶裕喜ヘッド・オブ・エンゲージメント
「日本の総会は“締め出し型”の発想が残っている」


インタビュー③/弁護士・中島茂
「100株を軽んじる会社は100株に泣く」


インタビュー④/東京大学・田中亘教授
「機関投資家は議決権を直接行使すべき」
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