「まず失敗せよ」リーダーに必要な2つのこと 「いきなり成功を求める」から、人は育たない

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遠藤:どんなにかっこいい戦略をつくっても、実現しなければ「絵に描いた餅」になってしまう。しかも、その実現を形にするのは社員1人ひとりだから、各自が日常的に守るべき規範を定めておくということなのでしょうね。

「主観的時間」と「客観的時間」

野中:そのとおりです。遠藤さんがいつも指摘されていることですが、いくらよいことを言っても、行動につながらないならすべて無意味です。

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遠藤1日1日という日常、つまり「いま・ここ」がいかに重要かということですね。

野中:そうですね。1日は確かに24時間ですが、それは人間の捉え方によって伸び縮みします。時計が指し示す「客観的時間」というのは幅がなく、点で表されますが、「主観的時間」というものもあります。

われを忘れて仕事に没頭しているときは時計の針が進むのが早いでしょう。それこそが「主観的時間」です。心理学者ミハイ・チクセントミハイのいう「フロー体験」や仏教の「無我の境地」がそれです。

そして、イノベーションをはじめ、「創造的な物事」は、「主観的時間」でわれを忘れて没頭することからしか生まれません

遠藤社員の失敗を許容し、チャレンジさせること。「客観的時間」より「主観的時間」を重視すること。「ワイズカンパニー」のリーダーには、この2つが重要ということですね。

(構成:荻野進介)

野中 郁次郎 一橋大学名誉教授

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のなか いくじろう / Ikujiro Nonaka

1935年東京都生まれ。58年早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造勤務の後、カリフォルニア大学(バークレー校)経営大学院にてPh.D.取得。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学各教授を歴任。日本学士院会員。知識創造理論を世界に広めたナレッジマネジメントの権威で、海外での講演多数。主な著作に『知識創造企業』(共著、東洋経済新報社)、『失敗の本質』(共著、ダイヤモンド社)などがある

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遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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