「まず失敗せよ」リーダーに必要な2つのこと 「いきなり成功を求める」から、人は育たない
野中:政治はともかく、このコロナ禍にうまく対応した機動力あふれる企業として、「アイリスオーヤマ」に注目しています。
もともとはプラスチック成形品の会社ですが、商品群をどんどん拡大し、園芸用品からペット用品、最近ではLED電球や家電分野にも進出し、成功しています。コロナ禍ではマスクが品不足になるや、瞬時に大増産に転換し、注目を浴びました。
今年2月、宮城県角田市にある拠点に赴き、毎週月曜日に開かれている新商品開発会議を見学させてもらいました。
この会議では、大山健太郎会長以下、社長、役員が一堂に会し、その前で担当者が新商品の企画提案を行います。議論は即断即決で、OKが出ると、社長がその場で決裁印を押す。稟議などの社内政治が不要ですから、開発がスピーディーに進みます。
「早く失敗せよ」社員の失敗を急かしたナデラ
遠藤:とてもいい話ですね。社長が社長室にこもっていてはいけない。それが今求められている真のリーダーシップです。

社長がパソコンにかじりつき、ビデオ会議だけをやっている会社は駄目です。トップがそういう姿勢だと、現場が盛り上がらず、ワクワクしない。アイリスオーヤマの現場はワクワクしていると思いますよ。
野中:私がアメリカ企業で最近注目しているのは「マイクロソフト」です。創業者のビル・ゲイツは自社のOSに固執し、そのOSに付属したソフトを売るという「囲い込み戦略」で大成功を収めましたが、モバイル化、クラウド化の波に乗れず、その後は伸び悩んでいました。
そのビジネスモデルを一新させ、業績回復を成し遂げたのが3代目の現CEO、サティア・ナデラです。ライバル会社のOSでも自社製品を使えるようにするという「オープン化」を進めるとともに、企業文化もそれにふさわしい中身に一新させました。
遠藤:「パッケージソフト」という製品を売る企業から、クラウドを使って「ソリューション」というサービスを提供する企業に変身させましたね。
野中:ナデラはインド人で、母親はサンスクリット語の研究者です。彼も哲学が好きで、そういう意味では先ほどのピーター・ティールに似ています。
遠藤:私もナデラには注目しています。彼がマイクロソフトのトップに就き、最初にやったのは、「早く失敗せよ(Fail Fast)」というメッセージを社内に発信することでした。失敗から早く学習し、次にトライせよ、というわけです。この失敗に対する寛容性が、悪い意味の前例主義、完璧主義がはびこっていたマイクロソフトの文化を一新させたようです。
野中:ナデラは「人間同士の共感」を非常に大切にします。それは「顧客に対する共感」であるとともに、「社員同士の共感」でもある。
ナデラがCEOになってから、アメリカ本社の経営執行チームのミーティングが様変わりしたそうです。以前は業績を表わす数字を皆でにらめっこし、達成、未達成を明らかにするとともに、未達成の原因を長時間かけて探る場だったそうです。