日本IBMが在宅勤務に取引先を巻き込んだ理由 個が輝ける環境づくりは社会全体の課題だ

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小室:なるほど、今回のコロナ禍で、男性社員が自宅で過ごす時間が増え、家事育児に参画するきっかけになったのですね。確かに男性の育休取得をずっと阻害してきたのは、「男性は休まず出社するものだ」という同調圧力ですから、今回、男性社員だけでなく、組織全体のマインドが出社前提でなくなったことは非常に大きいと思います。男性育休が100%取得できる企業にという宣言は素晴らしいですね!

(撮影:内藤 洋司)

山口:ありがとうございます。しかし、9%というところに課題意識を持っています。

小室:そうですね、男性の育児休業で大事なのは、実は「取得時期」です。というのも、産後の女性の死因1位は、なんと自殺なんです。

山口:自殺? なぜですか。

「産後うつ」のピークを夫が育休で支えられれば

小室:主な要因は「産後うつ」です。産後うつの起こる要因としては、妊娠中に出ていた大量の女性ホルモンが、出産で役割を終えて急に出なくなるホルモンバランスの崩れが、うつをひきおこします。産後うつのピークは、産後2週間から1カ月なので、この時期に妻が日夜1人で孤独に育児をすることが産後うつを悪化させます。

「うつ」を防ぐには「7時間の睡眠を取ること」「朝日を浴びて散歩すること」の2点によって、ホルモンバランスを戻していくことが重要です。ただ、これは妻がワンオペで育児をしている限り不可能です。夜中は2時間おきに授乳があるので、夫が交替してくれない限り、妻はまとまった睡眠は取れません。生まれたての赤ちゃんを連れて外出はできないので、朝日も浴びられない、運動もできない。こうした環境によって産後うつを悪化させて、自殺につながりやすくなってしまうのです。この産後うつのピークである2週間から1カ月のタイミングで夫が育休を取れれば救える命があるのです。

山口:そのデータは知りませんでした。そういうロジカルなデータは全社員に共有すべきですね。これを聞けば男性社員はどうして育休を取るべきなのか、何に気を付けるべきなのか、ちゃんと理解できるようになります。

小室:「いつか育休を取ればいい」と考えて、産後は以前通り仕事を続けてしまい、しばらく経ってから取ろう取ろうとしてタイミングを逸するという男性が多いですが、やっぱり産後すぐのタイミングで1カ月取ることが大事です。できればあらゆる会社に、この時期に男性社員が育休を取得することの重要性をアナウンスしてほしいですね。

山口:もう、無条件で育休を義務化してもいいかもしれない。

小室:実際に、少子化を克服したフランスでは、2週間の男性育休を義務化しています。

よく、「赤ちゃんが生まれてから、うちの母ちゃん性格が怖くなっちゃった」と言っている男性を見かけますが、実はこれは産後うつの症状として、号泣したり激高したりしやすくなるので、女性自身もとってもつらいんです。夫の行動にイライラして怒っているのではなく、どうしようもなくうつのつらい症状を抱えながら、必死で育児しているのだということを知っておいてください。

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