山口:勤務時間も全員一律に9時から17時半までである必要もないのではないでしょうか。結果的に、これまで制約を抱えていた人がいろいろチャレンジできる環境ができたのは間違いありません。
小室:働く時間や場所に制約を抱えていても、業務への熱い想いはしっかりあるのですから、そういった方がチャレンジできる環境は大事ですね。コストの面でも毎日1.5時間分を積み上げると、1年間で約3カ月分のフルタイムの労働時間となります。その時間分、別途派遣社員を雇用したら、大きなコストがかかります。経営者が「オフィスに出社しなさい」というこだわりさえ捨てれば、それだけで3カ月分の追加労働力が確保できるということですね。
「外資だからできる」は本当なのか?
小室:「全社員リモートワーク」などと言うと、「大企業の、しかも外資の話でしょ」みたいな反応も多いと思います。山口社長はどう思われますか。
山口:確かに「IBMさんは外資ですしね」といった声を伺うこともあります。しかし、日本IBMは80年以上も日本でビジネスをさせていただいている企業です。また、これまでに社員が輝ける環境を目指して試行錯誤しており、うまくいった施策も、まだまだ改善すべき課題もあります。個が輝ける環境づくりは弊社だけの課題ではなく、社会全体で整えていく必要があります。。
例えば、これは私の体験談ですが、お客さまとの会議をウェブに移行した当初、私は自宅からラフな格好で参加しますが、明らかに先方はオフィスにいらっしゃる。しかも、ときどきサポートしているスタッフの手が映ったりするわけです。
小室:サポートのために出社している人がいるということですね。1人の経営者が出社するときに「ネットつなぎ部隊」が10人ぐらい来て、みんなで手取り足取りウェブ会議につなぐという状況がありましたね。
山口:それを見てなんだか申し訳なく思っていたのですが、4月後半ごろになると、ほとんどのお客さまが1人でウェブ会議に参加されるようになった。つまり、これは技術的なスキル不足の問題ではなく、単なる環境や慣れの問題だということです。
小室:ゴールデンウィークのころ、経営者の方が同世代の友人とリモート飲み会を開催してZoomに慣れる練習をしているという話を聞きました。そんなふうに、経営者自身に「いよいよ働き方を変えなくてはいけない」という認識が芽生え、スタンスが大きく変化していると思います。
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