日本IBMが在宅勤務に取引先を巻き込んだ理由 個が輝ける環境づくりは社会全体の課題だ

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小室:少数派であるというだけで、能力と関係なく意見が言いにくいということがありますよね。これまでマイノリティー側である女性たちが主に感じてきましたね。

山口:当時の経験を通じて、性別とか国籍、キャリアといったものを全部取り外して、その人を見なければいけないと思いました。だから、役員だから偉いわけではないですし、新入社員からも学ぶことはいっぱいあります。

女性の管理職育成プログラムを導入

小室:女性の管理職を育成するためのプログラムも導入されたそうですが、プログラムの内容についてもお聞かせください。

山口:女性管理職が13〜14%程度に達して以降、横ばい状態が続いていました。理由をヒアリングすると「管理職は大変そう」「自分にはできない」といったプレッシャーを感じる声が挙がってきました。

そこで、管理職の大変さも楽しさも率直に共有するための「W50」というプログラムを2019年から導入しました。1年という時間をかけて、約50人の参加者が経営の勉強やワークショップを行ってきました。役員によるメンタリングも行っています。この役員によるメンタリングで経験談を聞けるのは好評ですね。

小室:参加された方は、全員管理職になるのでしょうか。

山口:強制ではありません。「やっぱり私は管理職にはならないほうがいいかな」という選択もできます。ただ、想像だけで管理職を敬遠するのはもったいない。経験とファクトを共有しておくことに意味があります。

小室:取り組みを通じて、女性の管理職は増えましたか。

山口:2019年の参加者でいえば、2020年8月末現在で、約50人の参加者のうち半数以上が部下を持つ管理職に着任しました。また、「管理職になりたくない」という社員も40%から10%にまで大幅に減少しています。

小室:40%から10%に減ったというのはすごいですね。具体的に学ぶことで自信がついたり、イメージで敬遠していたのが、やりがいがありそうだと気づけたりしたわけですね。

山口:現在、女性管理職の割合は17%で、グループ全体で女性社長はのべ4人となっています。管理職は2025年までに、25%を目指しています。

小室:女性社長4人はすごい。管理職比率は30%を超えたいところですね。私が就活中の学生だった20年前、女性として特別視されずに実力を評価されて活躍したいならIBMだよ、と先輩たちからよくアドバイスされましたが、変わらず走り続けていられるのですね。

「あの会社は特別」と見るのではなく、社会全体で働く環境の整備をしていく必要があります(撮影:内藤 洋司)
小室 淑恵 ワーク・ライフバランス代表取締役社長

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こむろ よしえ / Yoshie Komuro

1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方改革コンサルティング」の手法に定評がある。安倍内閣産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会、文部科学省中央教育審議会などの委員を歴任。「朝メール.com」「WLB組織診断」等のWEBサービスを開発し、1000社以上に導入。「WLBコンサルタント養成講座」を主宰し、1100名の卒業生が全国で活躍中。 私生活では二児の母。『プレイングマネージャー「残業ゼロ」の仕事術』『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』等著書多数。最新刊は『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』(PHP新書、2020年9月17日発売)。

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