日本IBMが在宅勤務に取引先を巻き込んだ理由 個が輝ける環境づくりは社会全体の課題だ

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小室:「うちの社員を何とか在宅勤務にさせてください」というのが普通の会社の対応ですが、お客さまも説得しようとされたわけですね。すんなりご理解いただけましたか?

山口:現場同士で話し合うより、まず、上位のマネジメントがご説明にうかがいました。それでもダメならトップが出よう、と。最初は、懸念を示されたケースもありましたが、緊急事態宣言が発令されたこともあり、途中から受け入れていただけるようになりました。

小室:従来は、一部の企業がリモートワークを推進しようと思っても、なかなかうまくいかなかった。けれども、今回はあらゆる企業が一緒に窮地に陥ったことで、一緒に山を飛び移ることにつながりました。社会全体の価値観が変わった結果、状況が大きく動いています。

オンライン化で気づかされた「可能性」

山口:もともとIBMでは、「3年後、5年後くらいには全社員がリモートワークできるような環境が整えられたら」と思っていました。それが、今回の世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で想像していた3年後、5年後の未来へと一気にワープしたような状況となりました。

小室:すでにそれを支えるテクノロジーも進化していたことに、多くの企業が気づいたことが大きいですね。御社においても、今回の出来事をきっかけに新たに発見されたことはありますか。

山口 明夫(やまぐち あきお)/日本アイ・ビー・エム代表取締役社長執行役員。1987年日本IBM入社。テクニカルセールス本部長、アメリカIBMでの役員補佐、理事、執行役員、常務、取締役専務執行役員などを経て、2019年5月より現職。また、経済同友会会員、一般社団法人プロジェクトマネジメント学会アドバイザリー・ボード・メンバーとしても活動(撮影:内藤 洋司)

山口:例えば、これまで会場の定員が500名のイベントは、500人しか参加できなかった。けれども、オンラインで開催したところ、地方在住の方も参加しやすくなり、一気に3000人くらいに増えるというのを経験しました。

なおかつ、オンラインイベントでは、タイムリーにチャットでコメントをいただけるので「何が良かったか・悪かったか」が、その場で手に取るようにわかりました。

小室:オンラインの場合「スライドが見づらい」「マイクが遠くて音声が聞き取りにくい」ということもなくなりますし、むしろメリットが多いと言えそうです。コメントを書くというのも、能動的に参加することにつながります。

山口:社内イベントも、入社式や新入社員研修、障がいのある方のインターンシップなどは、今回の状況を受け、リモートで行いました。入社式は新入社員約800人だけでなく、そのご家族や親戚、ゼミの先生までも参加いただけるようご案内したので、結果として約2000人が参加してくれました。

小室:親・親戚・ゼミの先生まで?!斬新ですね!

山口:はい、全国から入社する社員の地元のご家族や先生の参加が実現しました。リモート化は、会場の制約、移動の制約と時間の制約を解消する作用があったと思います。

小室:移動と時間の制約ということでは、短時間勤務の女性社員は、保育園のお迎えに間に合わせるために16時半ぐらいに退社している現状があります。本来の定時である18時までの1時間半は、在宅勤務だったら本当は働ける1時間半です。実際に、今回、全社的にリモートワークに移行したことでフルタイムに戻ることができたという人もいます。

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