日本IBMが在宅勤務に取引先を巻き込んだ理由 個が輝ける環境づくりは社会全体の課題だ

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山口:私は3人の子どもの父親ですが、子どもたちが小さかった当時を思い出し、できていなかった部分を炙り出すと恥ずかしさを感じます。

小室:ぜひ奥様にあらためて感謝をお伝えくださいね。この時期に溝ができてしまい、産後からずっと苦しい夫婦関係を続けている家庭もたくさんありますが、男性社員が1カ月休めば、その後何十年にわたって夫婦関係が安定することにもつながります。

女性活躍を可能にする社内環境

小室:日本IBMはこの4月に日経主催の「女性が活躍する会社BEST100」第1位で表彰されました。女性管理職の数が増えている会社、育児と仕事を両立できる会社は増えてきましたが、本当に女性社員が「活躍」までしている会社はまだまだ少ないと思います。そんな中で1位になれたポイントはどこにあるのでしょうか。

山口:もともと当社には、男女、国籍、LGBT、年齢などの色眼鏡で人を見ない傾向があります。女性活躍という切り口で受賞できたのは光栄ですが、女性だけに焦点を当てているわけではありません。

属性やキャリアなどにかかわらず、今その人がどれだけ頑張っているか、この先どういうポテンシャルを持っているかで人を見よう、と社内で意識を共有しています。

(撮影:内藤 洋司)

小室:10年前や20年前は、取り組みに賛否両論あったと思いますが、その頃山口さんご自身はどうお感じになっていましたか? どのように変化していったのでしょうか。

山口:当初は、ただ単純に「女性の社員数を増やす」「女性管理職の割合を上げる」ことに焦点が当たっていました。その背景にある目的を理解しないまま、目標値だけが一人歩きしてしまっていたところがあります。そのころは、私自身も理解できていませんでした。社内では、「どうして女性ばかり優遇するのか」という意見が出ていました。

けれども、実際に女性や外国籍の方が会議に参加し、多様性をもった意見がたくさん出てくるようになったことで、ダイバーシティーの重要性について身をもって実感する人が増えてきました。

小室:山口社長ご自身も、意識の変化がありましたか。

山口:私の場合は、海外に赴任したときに、初めて「自分は外国人であり、マイノリティーなんだ」と気づきました。日本にいれば男性がマイノリティーになることはないので気づくことがなかったわけですが、海外で仕事をして「世の中がマジョリティーとマイノリティーで成り立っている」というのを実感しました。

国籍の違いに限らず、企業内でも、大手の顧客を担当している、あるいは最先端のソリューションを扱っているだけで、「自分がマジョリティーであり、偉い」などと序列をつけてしまうのが人間の悲しさです。

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