「侍ジャパン」から始まる、野球の大逆襲 野球界が、真の改革へと動き出した

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スポーツの特性上、サッカーはゴールに一喜一憂できる一方、野球はルールを理解しないと楽しみづらい。そうした野球のハードルをすでに越えているライトファン、野球ファンにとって、侍ジャパンをきっかけに野球熱に火がつけば、鷹党や鯉党という12球団ファンにつながっていくのではないだろうか。

加えて、侍ジャパンには“宝刀”がある。日の丸を背負って戦うということだ。

「世界を舞台に戦う」というコンテンツの強さ

近年、日本のスポーツマーケットで人気なのは国際コンテンツだ。ザックジャパンやなでしこジャパンだけでなく、バレーボール全日本女子の「火の鳥NIPPON」、さらに卓球の世界選手権もゴールデンタイムに地上波で中継されている。世界で戦うニッポン人、という構図は万人の胸に響きやすい。

さらに言えば、グローバル化の現在、世界を相手にする日の丸戦士は、子どもたちに無条件で訴えかける魅力がある。サッカー少年の数が増えているのは、1990年代前半からの日本代表の活躍が大きく影響しているはずだ。仮に日の丸を背負って戦う侍ジャパンが、認知度、人気を高めていけば、野球選手を志す少年が増えるのではないだろうか。

それこそ、アマチュア球界が期待するものでもある。彼らもただ手をこまぬいているわけではない。競技人口を増やすための「Tボール」&「Kボール」という秘策や、国際戦略を立てているが、それについては第4回で述べる。

また新聞、テレビでの扱いは決して大きくなかったが、4月25日、日本球界にとって非常に有意義なニュースが発表された。侍ジャパンが株式会社を設立することになったのだ。新聞の小さなスペースの報道では「収益拡大へ」と書かれているくらいだが、この決定は極めて大きな可能性を秘めている。この件については、最終回で触れたい。

連載の1、2回で述べたように、現在の野球界が大きな危機に瀕していることは疑いない。だがしかし、侍ジャパンを通じ、大きく変わるチャンスもある。

(=敬称略)

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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