東大寺別当が語るアフターコロナの宗教の姿 今こそ日本の宗教の多様性が求められている

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――新型コロナウイルスの終息を願い、各地の寺だけでなく神社やキリスト教の教会にも、宗派・宗教を越えて同じ時間に祈願する「正午の祈り」を呼びかけました。高野山の僧侶やカトリックの司祭らとは大仏殿前で共同記者会見も開きました。どのような経緯があったのでしょうか。

さがわ・ふもん/1951年奈良県生まれ。1963年得度。1975年龍谷大学大学院仏教学修士課程修了。2010年東大寺執事長。2016年に華厳宗管長・第222世東大寺別当就任。2019年同宗管長と223世東大寺別当に再任。蒸気機関車を愛する鉄道ファンの一面も(撮影:ヒラオカスタジオ)

それ以前には各寺社や教会で異なる時間に祈願などをしていた。神社もキリスト教も宗派は違うが、宗教者同士のネットワークがあったので同じ時間に祈りを捧げることが実現できた。

これまでも、鎌倉の鶴岡八幡宮とは、東日本大震災の犠牲者慰霊と早期の被災地復興を祈る合同の祭事・法要をしてきた。仏教徒としてのつきあいは世界各国にある。ブータンに行ったときには現地のお坊さんが毎日、東日本大震災で亡くなった人たちのために拝んでくれていて驚いた。

また、奈良時代の渡来僧・仏哲はベトナム出身で、東大寺の大仏開眼法要で舞楽を奉納した。その縁で現在、ベトナムの寺院と仏像を互いに贈り合うといった交流もある。

求められる宗教の多様性

――東大寺が建立された奈良時代も感染症が大流行していたようですね。

東大寺を建立した聖武天皇は、仏教を国の宗教として正しく流布させようと全国に国分寺・国分尼寺を建て、盧舎那仏像(大仏)を造立した。その少し前の735年から737年に天然痘が大流行し、100万人から150万人の命が奪われている。人口500万人の時代だからものすごい死者の数だ。

政治の実権を握った藤原四兄弟も立て続けに亡くなった。天然痘をなくすための大仏造立だったわけでないが、そういう時代の背景があった。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

――仏教は日本人にどのような影響を与えたと考えますか。

仏教が中国や朝鮮半島を通じて日本へ入ってきたとき、賛成派と反対派の対立はあったが、神道は仏教を迫害せずに採り入れ、神仏習合が生まれた。欧米からみると、日本人の宗教はいいかげんだ、なんでもありだ、と思われているかもしれないが、いまいちばん求められているのはこのような多様性と言えるのではないだろうか。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「コロナは現代人の価値観にどう影響するか」「アフターコロナの時代を生きるにあたっての知恵」についても話している。
橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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