けんすうが考える「無能な人は誰もいない」理由 「異物」を創って「道を究める」日本的サードドア

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僕は、自分がなにをやるのかということに対して、「個人」よりも「人類」という種の単位で考えるようにしています。人類の全体最適のため、人類の進化のために、自分がやったほうがいいことをやる、という感覚ですね。

いま手がけている漫画サービス「アル」も、漫画というものに対して、サービスを作ることができて、さらにそこに身を投じられるという条件のそろった人は僕のほかにいないと思うから、自分がやらなければと考えています。

人類を俯瞰して役割を果たすなどと言うと、壮大に聞こえるかもしれませんが、そう考えるほうが仕事をしていくうえでもラクになると思うのです。

例えば、新入社員は、最初は何もできなくて落ち込むことがあります。先輩が5分でできることを、自分は3時間かけてしまう、といった具合に。そう比較すると自分が情けなくなりますが、実は新人がその仕事をこなすことは、経済学的には「最適」なんです。なぜなら、それによって先輩はその5分を節約し、より生産性の高い、別のことができるから。

このように全体として考えると、ムダな仕事をする人、無能な人は1人もいないということになります。そして、こういう考え方を持った組織のほうが、働いている人の幸福度は高いのではないかと思うのです。

コロナ時代、持たざる者にはサードドアだらけ

コロナで就職活動が滞るなど、いろいろな問題が起きていますが、こんなときだからこそ、とくに学生にとってはチャンスがあちこちに転がっていると思います。

例えば、学生も困っていると思いますが、企業もZoomなどで面接することになり、困っているということがある。それなら「学生とZoom面接をするためのマニュアル」を作って企業に売り込んではどうか、という発想もあります。

まだ誰も、なにが最適解なのかを知らない段階ですから、そういう行動に出て注目を浴びるという方法もあります。それを自分の武器にすることで、普通に面接したのでは試験を通過できなかった人が、採用されることもあると思うのです。

大学の新入生歓迎会はどうでしょうか。これまでは歴史ある大きなサークルが派手で強かったでしょう。それがこの危機で、ゼロリセットになっています。

こういう時にZoomで日本一大きな学生の交流会を作れば、今なら1万人規模で交流に飢えた人を集められる可能性もあります。そうすれば「オンラインで日本一の学生の交流団体を作りました」と言えるようになる。

僕が個人的に投資している会社の中に、オンラインのヨガ教室があります。少しずつ伸びてはいましたが、あと10年はかかるかなと思っていたところ、今回の危機でブームが来て、突然急激に伸びました。

劇団についても同様です。大きな会場を擁した既存の人気劇団は、劇場が使えなくなってピンチかもしれません。ですが無名の劇団がZoomを使ったオリジナル演劇を提供できれば、斬新な試みとして一気に注目を浴びる可能性もあります。

基本的に、大きな変化のときには、持たざる者が強い。持たざる者にとって、いまのような環境はとても戦いやすいはずです。僕なら、今こそサードドアを開けまくるときだと考えて、このチャンスを生かすと思います。

(構成: 泉美木蘭)

けんすう 起業家、投資家

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2003年にしたらばJBBSを運営するメディアクリップ代表取締役社長、2004年にライブドアに事業譲渡。2006年にリクルートに入社し、インターネット系の新規サービスの立ち上げに関わる。2009年に株式会社nanapiを創業、2014年にKDDIグループにM&Aされる。2019年1月にマンガコミュニティサービス「アル」を運営するアル株式会社を立ち上げる。

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