けんすうが考える「無能な人は誰もいない」理由 「異物」を創って「道を究める」日本的サードドア
人事の仕事も、会社の業績を伸ばすことですから、僕が行きたいというだけでなく、その部署が「こいつが欲しい」と言ってくれれば、そこに配属されるのではないかと考えました。
新卒の人間が入るのはめずらしい部署でしたが、飲み会に参加したり、キーマンにしつこく会ったり、メールをしたりして、希望通り配属されることになりました。
その部署ではまず、自分の強い部分を明確にするために「『2ちゃんねる』とか炎上に強い古川君」という立場をとりました。そうすることで、それに関連しそうな会議があれば呼ばれるようになったのです。
「新人」というラベルをつけられる前に「炎上の専門家」というラベルを自分で作ったということです。リクルートには若手にどんどん仕事をやらせる文化もあり、入社半年後にはネット系のコミュニティのプロデューサーを、翌年には新規メディアの責任者をやらせてもらうなど、非常に楽しく仕事をさせていただきました。
欧米のミッション文化と日本のオタク文化
「HOW」について話をしましたが、「WHY(なぜやるのか)」という視点で考えると、アレックスのような欧米人と日本人では考え方がかなり違うことも見えてきます。そこに、日本人がサードドアを開けるチャンスが隠されているとも思います。
欧米人はミッション文化で、神からの使命があるからそれを成し遂げる、そのために結果を求めるという考え方です。同様に、中国にも「天からの使命」という言葉があります。
こうした見方では、ミッション達成という「結果」を得るためには、過程でのやり方は問わず、ルール・ブレイクしても構わないという感覚があるのも特徴です。「ハック文化」とも呼ばれますが、マーク・ザッカーバーグなどは、まさにその典型です。
一方の日本は、オタク文化です。茶道、武道、剣道など「道」を追究する。つまり欧米とは違い、結果はどうあれ過程こそが大切であり、それを楽しいと考える。例えば剣道の世界では、敵を倒すことより、剣の道を究めることに価値があるとされています。
とくにクリエイティブの分野では、この違いが大きな差異となって表れます。初音ミクが流行ったのは、「曲を作りたいから、初音ミクというキャラを作る」という考え方ではなく、「初音ミクを使って、なにかをやりたい」という感覚からでした。これは欧米・中国とは違う、日本に独特の出発点です。
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