けんすうが考える「無能な人は誰もいない」理由

「異物」を創って「道を究める」日本的サードドア

そもそも、初音ミクやバーチャル・ユーチューバーのようなものは、欧米からは出ない発想です。欧米でああいうものを作るとなると、いかに人間に似せるか、いかにコストを下げるかという話になります。これが日本だと、いかに魅力的なキャラクターを作るか、いかに新しいクリエイティブに集中するかという話になる。

工業が主流の時代には、この日本人の感覚が製品のクオリティーの差として現れていました。トヨタの「カイゼン」が良い例です。ですが今後は、こうしたクオリティーで勝負するのは難しいでしょう。

一方で、「道」を追究する視点から、誰も見たことのないクリエイティブを生み出していくことこそが、日本の強みになるのではないかと考えています。

僕はいま「アル」という漫画系のウェブ事業を手がけていますが、個人のクリエイターの創造力には本当に強みがあります。

例えば、ディズニーだと『アナと雪の女王』や『ベイマックス』のように、グローバルで誰もが感動できる、「受ける」作品を作りがちです。でも日本の漫画家は、「この設定はすごい」「この発想はなかった」という新しいものをどんどん生み出しています。

例えば、海外でも人気の漫画に『五等分の花嫁』(春場ねぎ/講談社)という作品があります。5つ子とその家庭教師をめぐる物語ですが、結婚式で顔が同じ5つ子たちを目の前にして、誰が誰だかわからないという場面から始まり、5つ子との恋愛ストーリーが展開されていきます。

5つ子と恋愛して、誰と結婚するかわからないなんて、見たこともない発想ですし、海外でも話題になって、この漫画に関する論文が登場するほど、非常に熱い状況になっています。

こうした日本的な創造力は、世界にとっての「異物」となり、日本人にしかできない「サードドア」的な競争力になる、そう僕は考えています。

起業家と会社員に断絶はない

僕は、リクルート在籍中の2007年頃に起業しました。最初は副業からのスタートです。いきなり起業するのは怖いとも思っていましたし、本業にしてしまうと、それで稼がなければなりません。

その点、副業なら、短期的な収益を気にせずに、とがった面白いプロダクトを作れるのではないかという考えがありました。実際、知名度を高めたり、爆発的にユーザーの増えるサービスをいくつか作ることができ、2年後、投資家の小澤隆生さんと出会ったことで、本腰を入れてフルコミットすることになりました。

「会社を辞めて独立した」と見られるかもしれませんが、僕には、キャリアの断絶とか、会社員から起業家へ、といったような感覚はありません。どちらであれ働いていることに変わりはありませんし、会社員のリスクと起業家のリスクは種類が違うというだけです。

さらに言えば、会社員と起業家の間には断絶があるかのように考えているのは、会社員の方だけです。自営業の方や中小企業の社長さんなどはそうは考えていません。こと「起業」となると、ビジネスパーソンのほうがリスクを考えて、身構えてしまうところがあるのかもしれません。

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