すべて把握したい経営者と忖度する現場の末路 日本企業に「スピード経営」が根付かない理由

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この業界では競合企業同士の製品開発競争が激しく、スピードが重視されています。それに加え、顧客のニーズも変化しやすいため、正確で素早いニーズの把握、製品化が求められます。そのため、第1フェーズでは幅広い事項が検討対象となり、第2フェーズへと引き渡されるのに比較的時間を要するというデメリットも指摘されています。

その結果、第1フェーズでOODAを回している間に市場環境が激変してしまうということも多々生じているようです。

【改良点】コンカレント・エンジニアリングを導入して、第1フェーズと第2フェーズを横断的にマネジメントするOODAを回す

この製品開発プロセスをさらに進化させていくためには、いわゆる「コンカレント・エンジニアリング」と呼ばれる制度を導入する必要があるでしょう。つまり、フェーズごとのOODAと、各フェーズを統括したOODAを同時に進展させるのです。

具体的には、第1フェーズで「洗練されたアイデア」のみを第2フェーズに伝えるだけではなく、まだ十分に練られていない「ジャスト・アイデア」についてもいくつかの候補を伝えるということです。

第2フェーズでは、そのような「ジャスト・アイデア」についても第1フェーズと連携しつつ製品化を進めていくプロジェクトに着手することが必要です。

これは、従来のフェーズごとのOODAを廃止するということではありません。それはそれで機能しているため、そこは従来どおりに運用しつつ、「ジャスト・アイデア」を起点とするプロジェクトをフェーズ横断的にマネジメントしていく高次のOODAを新たに加えるということです。

もちろん、すべての「ジャスト・アイデア」をこのようなフェーズ横断的OODAの対象にするわけではありません。数多くの「ジャスト・アイデア」の中から選別が必要になります。ここでは、これを担当する人の目利き能力、すなわち「情勢判断」における直観的判断力が問われることになります。そのためには、「情勢判断の仕組み化」が重要になります。

失敗を通じて誤りを排除し、進化し学習していく

経営とは連歌のようなものです。連歌とは、ある人が和歌の上の句を詠めば、それに応じた下の句を別々の人が詠むという室町時代に盛んになった遊びです。経営においては、トップが上の句を詠む。それに対して部下はそれに応じた下の句を詠まなければなりません。上下の句の当意即妙のやり取りが経営の醍醐味になります。

しかるにトップは方針を出しても部下がそのとおりに動かないと嘆き、部下は部下でトップの方針が見えないと批判します。連歌が和歌として成立するためには、それに適したマネジメントが求められます。それは、一言でいえば、混沌とした状況の中で、上下の句に関連性をもたせるように、秩序をもたらすということです。

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