「出世すればするほど愚かになっていく」理由 問題解決を導く「名探偵OODA」の基本原則とは
「観察」は最強の武器になる
シャーロック・ホームズにも大きな影響を与えたと言われる世界初の名探偵、オーギュスト・デュパンが登場するエドガー・アラン・ポーの推理小説に『盗まれた手紙』があります。
この物語の舞台はフランス王宮です。D大臣がある重要な手紙を盗み、秘密の命令を受けたG警視総監が徹底的に捜査しますが発見することができません。相談を受けたデュパンは、即座に手紙のありかを見抜き、手紙を取り返します。
デュパンが手紙を瞬時に見つけることができたのは、D大臣の知力をまずは観察したからです。デュパンは、G警視総監の欠点を次のように指摘します。
「総監やその部下たちが、あんなにちょいちょい失敗するのは、(中略)相手の知力のはかり方が悪いため、というよりも、むしろはからないためなんだ。彼らはただ自分たち自身の工夫力だけしか考えない。そしてなんでも隠されたものを捜すのに、自分たちの隠しそうな方法だけしか気がつかない」(佐々木直次郎訳)
一方のデュパンは次のように推理します。
「僕は、Dの大胆な、思いきった、明敏な工夫力と、彼がその書類を有効に使おうと思うなら常にそれを手近に置かなければならないという事実と、それが総監のいつもの捜索の範囲内には隠されていないという、その決定的な証言とを考えれば考えるほど、大臣がその手紙を隠すのに、ぜんぜんそれを隠そうとはしないという遠大な、賢明な方策をとったのだということがわかってきたのだ」(同訳)
このように相手の知力を正確に評価することで、誰が来てもすぐ目につくようなところ、すなわち、暖炉の前にぶら下がった手紙差の中に盗まれた手紙を発見したのです。
この物語からわかるのは、自分の都合で立てた計画を押し付けるのではなく、まずは環境を観察し、それを的確に評価したうえで対処しなければならないということ、なかでも人が気づかないところを観察しなければならないということです。
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