すべて把握したい経営者と忖度する現場の末路 日本企業に「スピード経営」が根付かない理由

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比喩的に述べれば、想定外の事象を「点」として想定内化するのが危機管理であるとすれば、OODAマネジメントとは、想定外の事象を「面」として囲い込み、その中のどの点が生じたとしても、ある程度対応できるように準備することを意味します。このような「不確実性の想定内化」にこそOODAマネジメントの本質があります。

例えば、営業現場やマーケティング活動、開発現場などでは、現場情報への即座の対応が求められます。しかし、その業務内容は非定型的なものだとはいえ、まったくの想定外というわけではなく、ある程度の囲い込みは可能です。OODAの活用が求められるのは、このような不確実性の囲い込みが重要になる領域です。

しかしながら、OODAが有効であったとしても、その導入がさまざまな障害により定着していないというケースは多いといえます。現状では、そもそもOODAについては、「名前は聞いたことはあるが、それが何なのかよく知らない」という声は大きいようです。

例えば、ITスキル研究フォーラムが実施したDX(デジタルトランスフォーメーション)実態調査によると、DX推進に関する12項目のうち、OODAの取り組みが最も低いことが明らかにされています。

DX推進には、PDCAではなくOODAが重要な役割を果たします。しかし大半の企業は、そもそもOODAに対する理解がなく、それを推進しようという動きにはなっていない実態が浮かび上がってきます。なかには、OODAの導入に対して真剣に取り組もうというところもあります。しかし、残念ながらいくつかの障害があるため、それが遅々として進まないことも少なくありません。

以下では、失敗事例と成功事例を紹介しながら、OODAの導入や運用上の問題について考えてみることにしましょう。

【失敗事例】A社のトップダウン経営

OODAループの導入がうまくいっていない例として、A社のケースを取り上げてみましょう。

この業界は、製品改良のスピードが速く、顧客ニーズに合わせて仕様を変えていかなければ競争に打ち勝つことができないという特徴があります。最終ユーザーは中国企業のセットメーカーが多いため、需要予測が難しく、しかも値下げ要求も強い状況になっています。

領域的にはOODAが適用されるべきところですが、A社ではそれがなかなか実行されていません。OODAに対する理解はあるものの、問題点が指摘できます。

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