すべて把握したい経営者と忖度する現場の末路 日本企業に「スピード経営」が根付かない理由

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指摘するだけで決断ができないリーダーなら、現場はどうなるのでしょうか(写真:xiangtao/PIXTA) 
新型コロナウイルスの世界的流行という想定外の事態が起こり、ビジネスの世界でも、リモートワークやDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進など、マネジメントのあり方が根本的に変わろうとしています。その変革の中でも重要になっているのが、現場の状況変化や問題に即時対応するスピード経営です。
現場で意思決定する組織はどうすればつくれるのでしょうか。このたび『OODA Management(ウーダ・マネジメント) 現場判断で成果をあげる次世代型組織のつくり方』を上梓した原田勉・神戸大学教授が、OODAループを導入した企業の失敗事例と成功事例をもとに、スピード経営を実現するためのヒントを解き明かします。

名前は聞いたことはあるが、よく知らない

リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルスの流行といった想定外の事態が、数年間隔で生じています。このような状況の下では、現場の意思決定を重視するOODA(Observe、Orient、Decide、Act)ループは想定外の事態への対応という意味でも役立つものであり、むしろ、PDCAよりもOODAこそが最適なマネジメントのあり方だといえます。

『OODA Management(ウーダ・マネジメント)』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ただそうであっても、OODAループがビジネスの領域に応用される場合、その日常業務の中で真価を発揮するのは、いつ起こるか予測できない想定外の事態への対応ということにあるのではなく、通常ならば想定外となるかもしれない事象を「想定内化」することにあります。

この想定内化によって不確実性に直面しても、そこから秩序を見いだしていくマネジメントが可能になるのです。

この点で、危機管理と呼ばれるものも、想定外の事象の想定内化という点で共通しているかもしれません。しかし、危機管理とはあくまでも想定外の事象を事前に想定し、それが将来生じた場合にも対処できるように準備することです。それに対し、OODAループによる想定内化とは、必ずしも想定外の事象をピンポイントに特定し、そのための準備をするものに限定されません。

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