コロナで強制移住した男性「田舎暮らしの実態」 食事や仕事、生活費、人間関係はどうなのか

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最後に、田舎の自然について語っておこう。自然に憧れて田舎に移住する人も多い。だが、多くの田舎に共通することだが、豊かな自然が失われてしまっているケースも少なくないのが実態だ。

戦後の植林では、豊かな生態系の源泉だった広葉樹林は各地で多くが消え、杉や檜の山が一般的。ある移住者は「冬も覆いかぶさるような鬱蒼とした杉林の中を通る道路を走るたびに気が重くなる」と話す。こうした山林では、秋になっても美しい紅葉は見られない。

田舎では、送電線やソーラーパネルも住む場所に接近している場合もある。高齢化する集落では、農薬や除草剤が盛んに使われ、ダム建設によってダメージを受けた川に魚たちの姿は少ない。豊かな自然があるようで、実際には環境破壊が着実に進んでいることを実感するのも田舎生活の現実である。

もちろん、都会とは違った意味で、自然を身近に感じることが多い。春には、ワラビやコゴミ、タラの芽、ヨモギなどの山野草がたくさん採れる。蛍やカエルも目や耳を楽しませてくれる。

ただ、あまり歓迎できない動物や爬虫類もやってくる。筆者が住む地域は「動物園」と揶揄されており、畑を荒らすシカやイノシシ、サルなどの害獣が多い。畑は、電気柵や網で囲わなければ、収穫はおぼつかない。ムカデに刺される被害も多いほか、マムシなどの毒蛇に噛まれた人が年間数人、地域の病院に担ぎ込まれるという。

生き方や表現力が問われている

前述のとおり、最近は移住を考えている人からの相談も多い。移住を希望するある女性(30代)は、「田舎でただ農業がしたいわけではない。もっと立体的に人と面白く関わりたい。農業は何か面白そうなことができそうだ」と話す。

神奈川県でカフェを営む女性(40代)は、「小麦が体に合わない人も増えてきて、食の安全を考えるようになった。コロナでデリバリーも盛んになったが、その包装や容器として生じる大量のゴミの問題を考えると、都会で暮らす危うさのようなものを感じた」と訴える。

田舎では、水や食料などの安全が都会よりも確保されている。そうした生活の安全や安定を得たうえで、広い土地があり、自然に恵まれた田舎で、何かを表現したり、自分のやりたいことを突き詰めるなら、田舎生活のデメリットはあまり気にならないのではないだろうか。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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