日本人の現金・対面主義がどうにも抜けない訳 感染リスクの回避が大した追い風にもならず

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「これまでは普及が遅れていた電子商取引が、外出自粛のために拡大した」との報道が多く見られます。

とくに、ネットスーパーの売り上げが増加したといわれます。

また、アンケート調査でも、「コロナの影響でネットショッピングが増えた」との回答が多くなっています。

しかし、統計の数字をみると、少なくともいまの時点では、日本のネット通販がコロナによって顕著に増えたことは確認できません。

総務省によると、「ネットショッピングの支出額」(2人以上世帯)は、2020年4月においては、1万4622円です(家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について<2⼈以上の世帯>、2020年6⽉5⽇、総務省統計局)。

ところが、2019年には、1万4000円を超える月が続いていました。したがって、コロナによって増えたとはいえません。12月には1万7000円程度となっていたので、これと比べると、4月にはむしろ減少しています。

また、増加率でみると、2018年から2019年にかけては、顕著な増加となっています。これに比べると、2019年から2020年にかけての増加は、無視しうるほどのものです。

なぜ進まなかったか?

一般にはコロナ下において日本でもネットショッピングが急増したと言われるのに、実際にはそうなっていないのです。これは、なぜでしょうか?

第1に考えられるのは、「報道されているのは、急激な増加が起きている一部のことであり、それが全体の姿とはいえない」ということです(これは、後述するキャッシュレス化についても言えることです)。

第2の理由は、想定を超える需要増に対して提供者側の準備ができておらず、注文に応えきれなかったことです。

楽天西友ネットスーパーは、アクセスの殺到で、3月26日に首都圏1都3県での受注を一時停止しました。イトーヨーカ堂のネットスーパーは、一時、利用者のログインを制限しました。イオンネットスーパーやマルエツネットスーパー、ダイエーネットスーパーでも、サイトが重くなったり、届け日を指定できなくなったりなどの支障が発生しました。

前記BISのレポートは、コロナが促進したもう1つの動きとして、キャッシュレス決済の増加を挙げています。

キャッシュレスなら、現金の受け渡しに伴う接触を避けられ、コロナの感染リスクを低減させられるからです。

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