尾道ラーメンが東京でどうもパッとしない理由 全国的には有名になったがその名前が独り歩き

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ところが、「麺一筋」をはじめ、都内で尾道ラーメンを提供していたお店は、実はほぼ尾道で生まれたお店ではない。そして、提供していたラーメンは、その多くが尾道ラーメンを「再現」して作ったものだった。

「われわれ地元の人間が都内の尾道ラーメンを食べると、やはりどうしても違和感が残るのです。見た目は似ていても、豚の背脂や麺質、醤油の効き方などどれも違う。現地の味そのままの尾道ラーメンは都内には存在しないのではないでしょうか」(榎本氏)

大きな特徴である豚の大粒の背脂は、繊維を壊さない切り方が非常に難しいという。切り方が悪いとスープの熱で脂が溶けてしまい、小粒になってしまう。麺についても、都内のお店で現地のかための細麺(低加水麺)を使うところは見られず、モチモチとした平打ち麺(多加水麺)を使っているお店が多いという。

地元で愛される味は正しく伝わっていない

“尾道ラーメン”という名前だけは有名になったが、地元で愛される味は正しく伝わっていないというのが現実なのである。

ご当地ラーメンと一口に言っても、それぞれ広がり方が違う。四国地方の“徳島ラーメン”も独特だ。

徳島ラーメンは濃厚な豚骨醤油スープに甘く煮た豚のバラ肉、生卵をトッピングするスタイルが、ラーメン好きの間では知られている。一方で、徳島ラーメンは現地では味の系統が数パターンあり、実はこのスタイルのラーメンはそのうちの1つにすぎない。その中でも見た目や味のわかりやすい濃厚系がチェーン店を中心に都内に広がったというのが今の形だ。

「喰海」は「東京ラーメンショー」や「大つけ麺博」のようなイベントやデパートの催事に積極的に参加して尾道ラーメンを東京に紹介しているが、尾道ラーメンの味が都内に浸透していないため、なかなか苦戦を強いられているという。

今回「麺一筋」が閉店したことで、東京都内でさらに尾道ラーメンの認知度は下がる。福岡、北海道といった認知度が高く定番なご当地ラーメンのメニューを扱うお店ばかりが目立ち、尾道ラーメンのような地元の味が全国に広がっていく流れになるのは、なかなか難しいだろう。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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