「今度こそ助ける」農家の娘を突き動かした後悔 産直ネット通販『食べチョク』で生産者支援

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ところが農家の課題を少しずつ知るうちに、「自分にできることがあるんじゃないか」と考えるようになり、気づけばその思いは、食品生産にあたるすべての人たちに貢献したいという使命感へと育っていった。

「食べチョク」では、生産者が、個人や飲食店に“直接”商品を販売できるプラットフォームを提供(図表:Womantype編集部)

世間の注目を集めるスタートアップ経営者となった今、意識してキャリアの棚卸しをすることはなくなったと、秋元さんは振り返る。

「自分自身がどうなりたいか、と考えることは今はないですね。『この業界に貢献するために、自分はどうなるべきなんだろう?』という考え方に変わりました。

DeNAにいた頃は、自分のやりたいことと仕事の方向性が合っているか、頻繁に確認していましたが、今は事業がそのまま自分のやりたいことなので、キャリアに悩むことはないです」

台風被害から学んだ「今やれることをやるしかない」

農家で生まれ育ち、農業界の発展に心血を注ぐ秋元さん。その信念に突き動かされてやったことでも、最近反省したことがあったという。

「去年の台風のときに、いても立ってもいられなくて、夜行バスで泥の撤去作業を手伝いに行ったんです。それも、会社の資金調達でめちゃくちゃ忙しいときに。そのときに、『多少は役に立ったけど、貢献できた量が少ないな』と思ってすごい落ち込みました」

「でも、後悔はしていない」と、秋元さんは続ける。

秋元里奈(あきもと りな)/ビビッドガーデン 代表取締役社長。慶應義塾大学理工学部を卒業後、ディー・エヌ・エーへ入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経験した後、スマートフォンアプリの宣伝プロデューサーに就任。2016年11月にvivid gardenを創業。実家は相模原の農家。「食べチョク」(写真:Womantype編集部)

「小さなアクションでも、実際にやってみなければ、自分の小ささを実感することはできませんでした。悔しさなど負の感情からも学び、つねに変化していくことが大事だと考えています。

だから、この状況の中で働く目的がわからなくなってしまった人は、とにかく目先のやれることをやってみるのはどうでしょうか? 自分のやるべきことを知る一歩になると思います」

何度つまづいても、秋元さんの信念は揺るがない。彼女を突き動かす原動力は、生産者に対する使命感だ。

「創業から時間が経つとともに、生産者さんに対する責任感が大きくなりました。「食べチョク」は今、約1300人の生産者さんと契約していて、中には『売り上げの半分以上が食べチョク』という生産者さんもいます。そんな状況で、私が折れるわけにはいきません。

プレッシャーは大きいですが、あえて感じないようにしています。自分が目指す世界を実現するためには、立ち止まってはいられませんから」

多くの人が世の中の変化に戸惑う中、秋元さんの思いは行き先を見失うどころか、多くの人を助けながら、まっすぐに目的地に向かっていた。

(取材・文/一本麻衣 インタビュー撮影/赤松洋太)

※本記事の取材は今年4月にオンラインで実施、写真は2019年2月に撮影したものを使用しています。

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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