「今度こそ助ける」農家の娘を突き動かした後悔 産直ネット通販『食べチョク』で生産者支援
「私たちと契約している生産者さんは全国にいるので、日本のどこかで自然災害が起きる度に、誰かしらが被害を受けるんです。
今までは、『食べチョク』のシステムが追いついていなかったために、即座に支援に動くことができませんでした。それがずっと、悔しい思いとして自分の中にあったんです。
とくに昨年の大型台風が直撃したときには、『次こそはすぐに動けるようにしておきたい』と強く思いました」
生産者さんのために、自分は何もできなかった――。
自分たちの力不足を嫌という程突きつけられても、秋元さんは現実から目をそらさなかった。やるべきことを見極め、着々と事業を成長させてきたことが、コロナ禍ですばやく適切な支援を実現することにつながった。
そんな秋元さんは今年、29歳になった。「世の中がこんなに大きく変わるのは、社会人になってから始めての経験です」と言うが、いざというときに生産者を助けたいと思う気持ちは、秋元さんが学生の頃からずっと存在していたものだ。
「東日本大震災が起きたとき、自分はまだ学生でしたが、何もできなかった後ろめたさがあるんです。
農業の世界に入ってみると、未だに震災のダメージってすごく残っていて。それを知る度に、何も知らずにただテレビを見ていたあのときにも、この人たちのために貢献できたことがあったんじゃないかと感じますし、今もそう思っています」
偶発的な出来事が、キャリアを思わぬ方向に導く
コロナショックによって働き方が変わり、「自分が本当にやりたい仕事は何なのか」「何のために働いているのか」を改めて考えた人は多いはずだ。
働く目的を見失いかけている人に、秋元さんは「意識的に人との出会いをつくってみては」と助言する。
「今は外出ができないので、友人以外の人と出会う機会も減り、偶発的な出来事が起こりにくい状況です。
自分のやりたいことは、いろんな価値観に触れながら見つけていくものだと思うので、普段以上に出会いを呼び込む積極性が求められるのかなと。家にいても、オンラインコミュニティーに参加したりはできそうですよね」
秋元さん自身も、ビビッドガーデンを立ち上げたのは、社外のコミュニティーに参加したことがきっかけだった。
新卒入社したDeNAで、レガシー産業のIT化を手掛けたことでビジネスの目線を養い、そのタイミングで農業関係者に“たまたま出会った”ことが、今の事業につながったという。
「最初は土日だけとか、趣味の範囲で生産者支援をやるつもりでした。当時はそれがビジネスになるとは全然思ってなかったんです」