
法案にサインした後、小づちを鳴らすトランプ米大統領(写真:Tierney L. Cross/The New York Times)
トランプ政権は7月4日、「1つの大きく美しい法」と題する減税・歳出法の成立にこぎ着けた。選挙公約だった減税などが盛り込まれた内容だが、米国の財政規律に与えた影響は見逃せない。
今回の法律で、米国の財政赤字は拡大する。主因は、2018年から実施されている減税(トランプ減税)のうち、25年末に失効予定だった所得税減税の恒久化だ。これにより、今後10年間で税収が約4.5兆ドル減ると見込まれている。低所得者向け公的医療保険の歳出削減などで一部の財源は賄うが、それでも10年間で財政赤字は約3.4兆ドル増える。
もっとも、今回の法律による財政赤字の拡大には、「景気を支えるための必要悪」の側面がある。この法律とは別に、トランプ政権は関税を引き上げている。トランプ減税の失効が加われば、米国経済は実質的なダブル増税に直撃されるところだった。今回の法律では、トランプ減税を恒久化したうえで、残業代の免税措置など選挙公約だった減税を前倒しで開始。その一方で、歳出削減の本格実施を28年度以降に先送りし、当面の景気の下支えを狙っている。
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