「今度こそ助ける」農家の娘を突き動かした後悔 産直ネット通販『食べチョク』で生産者支援
その成果は、生産者の売り上げに貢献する形ですぐに表れた。
イベントの中止で余ってしまった8000個のカキが完売。飲食店や百貨店への既存の販路が消滅する中、「食べチョク」で大量の注文を受け、「一気に職場に活気が戻りました!」と報告してくれる生産者も現れた。
一方で、消費者側にもポジティブな変化が生まれていることを、秋元さんは感じていた。
「スーパーから食品がなくなったり、レジに長時間並ぶのを避けたいといった状況になったことで、スーパーの先の生産者にも消費者の意識が及ぶようになったと感じています。ネットで食材を買うのが初めてというユーザーも増えていて、『こんなにおいしい食材が取り寄せられるなんて知らなかった』という声も届いています」
「食べチョク」のサービスは、生産者がいなければ成り立たない。長期化する事態に危機感を募らせる反面、コロナショックは「食べチョク」という事業の価値を再認識する機会にもなったという。
「今は、私たちのプラットフォームの存在意義がある意味生かされるタイミングです。こだわりを持って食品生産にあたっている人たちが正当に評価される社会をつくるため、生産者さんたちのためにできることは全部やっていきたい。そう思っています」
柔軟性が明暗を分ける
生産者支援の特設ページは、まだ東京都の外出自粛要請も始まる前の、かなり早い時期に開設された。混沌とした状況の中で、秋元さんがいち早く生産者の支援に動き出せたのはなぜなのか。
「世の中全体が大きく変わるときに大切なのは、いかに状況を早く察知してアクションを取れるかだと思います。柔軟性を持ち、日々変わる出来事に対応していけるかどうかで明暗が分かれます」
柔軟性の大切さを強調する秋元さんには、台風の被害を受けた農家を助けられなかった苦い過去がある。