日本がコロナ2波に勝つ科学的で現実的な戦略

鎌江東大教授が説く社会的価値のある医療政策

これに400億円余り?(撮影:尾形文繁)

ただし抗原検査はPCRの感度70%に対して50~60%と低いようだ。厚労省は保険適用の検査のやり方として、当初、抗原検査を行って陰性だったらPCRでもう一度検査をするという制度を導入した。しかし抗原検査1回だけでもPCR検査と結果があまり変わらなかったという理由で、抗原検査1回だけで確定診断してよいと変更された。これは臨床診断としては容認できるが、本当に検査を抑止に使うつもりなら問題である。

検査による感染抑止の場合、見逃しをなくす必要がある。抗原検査の感度を60%と仮定した場合、抗原検査を2度繰り返してから、PCR検査を行えば、1回の抗原検査だけでは60%程度にすぎない陰性適中率を、90%以上に高めることができる。つまり、見逃しにあたる偽陰性を40%から1桁に減らせる。

ただ、偽陰性を減らすために繰り返し検査を行えば、どうしても偽陽性が増える。これはトレードオフの関係にある。きちんとデータを踏まえれば、偽陽性や偽陰性、感染者数は推計できる。それに基づいて、検査の理論と人権の問題をどのようにバランスさせるのかをしっかり議論して、戦略を立てていくべきだ。

この戦略は検査のことをよく知っているエキスパートたちが議論して練り上げなくてはならない。また、検査数が増えるので、それができる技術者の体制も作らなくてはならないし、追跡を行う保健所等の人員も拡充していく必要がある。

費用は実現可能な額で効果も高い

――しかし、費用は納得できる範囲に収まりそうですね。

およそ費用対効果に見合わないようなマスク2枚の全戸配布に400億円余りもの費用をかけるくらいであれば、このメガクラスター追跡作戦に予算をつけることのほうが、現実的に求められる対策だ。年100億円ぐらいの予算をつけても4年間維持できる特別作戦チームを設置することができる。陽性者の隔離に関しては、指定感染症の縛りをもっと緩くすべきだ。2週間の観察は必要だが、症状のないときは原則自宅で待機してもらい、ITを活用しつつプライバシーに配慮した観察を行えばいい。

空港の水際作戦については、空港周辺の大学や病院などと連携してコロナ対策病棟を集中して作れるのではないか。ダイヤモンド・プリンセスのときの反省を生かして、有症状の陽性者には入院してもらい、無症状の場合は、待機観察の場所として空港周辺のホテルが利用できれば、観光客が減っているホテルの支援策にもなる。

北大の西浦教授は空港で10人見逃せば数カ月後に感染爆発が起こると警告しているが、そうならないためにも、空港の水際を含めたメガクラスター追跡作戦が必要だ。ただ、これまで、空港に限らず国内で10人程度の偽陰性は見過ごされてきたと推測されるので、それで感染爆発になるなら、すでにわが国でも感染爆発が起こっていたとしても不思議ではない。実際はそうなっていないので、感染モデル予測が必ずしも当たらない別の理由があるように思える。

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