今年5月に中国人民銀行(中央銀行)が公表したリポートによれば、中国の都市部住民の家計総資産は1世帯平均317.9万元(約4770万円、以下1元=15円換算)だった。北京では892.8万元(1億3392万円)、上海では同806.7万元(約1億2100万円)にのぼる。内訳をみると6割が住宅で、2割が金融資産だ。都市部世帯の持ち家比率は96.0%にのぼり、41.5%は2軒以上の住宅を持っているという。平均的な日本人からみると、けっこうな豊かさではないだろうか。
アメリカのトランプ大統領は中国が世界貿易機関(WTO)で発展途上国扱いを受けるのは不公平だとして、繰り返し不満を表明している。確かに都市部の繁栄ぶりや都市住民の資産を見ているとそういう気分にもなってくる。最近、それに反論するかのように、中国の要人から「まだまだ途上国だ」というデータが披露されて話題を呼んでいる。
統計局が定例会見をドタキャン
中国では毎月中旬に、工業生産、小売売上高、固定資産投資など前月の主な経済統計がまとめて発表される。その際には国家統計局の局長クラスが記者会見して、海外メディアも含めて質疑に応じる。ところが最近、この慣例がいきなり崩された。翌日に5月の主要統計の発表を控えた6月14日の夕方、国家統計局のホームページに「新型コロナ対策のため、記者会見は中止してネットで発表する」という公告が掲示されたのだ。
公告には「当日の午後には、メディアの関心に答えるかたちで報道官の解説をホームページに掲載する」とあった。実際に15日の午後には解説文が掲載されたのだが、きわめて異例の対応だった。当日の午前には北京市政府が実際に報道陣を集めたうえで、新型コロナウイルスの感染拡大についての記者会見を開いている。同じ経済系の官庁である国家発展改革委員会も翌16日に定例会見を、会場に記者を集めて行った。
国家統計局の会見中止の不自然さは明らかだ。発表された数字はエコノミストのコンセンサスを下回る水準だったが、それほど悪いわけでもない。工業生産は前年同月比4.4%増と、4月の3.9%増より改善。消費や投資も前年同月比マイナスだったが、減少幅は縮んだ。会見をドタキャンしなければならないほどの数字ではない。
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