中国に衝撃「月収1.5万円が6億人」の貧しさ 家計資産1億円超える大都市との巨大な格差

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考えられるのは、この半月ほど中国で話題になっているテーマについて突っ込まれることを避けた可能性だ。

5月28日、全国人民代表大会閉幕後の記者会見で、李克強首相は「中国は人口が多い発展途上国であり、年間の可処分所得は平均で3万元(45万円)だが、平均月収が1000元(1万5000円)前後の中低所得層も6億人いる。月1000元では中規模都市で部屋を借りることすらできない」と発言。これが、あらためて中国国内の巨大な格差に目を向けるきっかけとなった。

中国では今年を「小康社会(ややゆとりある社会)」を全面的に実現する年と位置付けている。1979年に当時の大平正芳首相が訪中したとき、最高権力者だった鄧小平氏が「20世紀末までにGDP(国内総生産)を4倍増させ、人々の生活を小康レベルにする」という目標に言及した。以来、小康社会は中国共産党の主要なビジョンとなっている。

「貧困人口ゼロ化」が今年の目標

習近平氏が共産党トップに就任した2012年秋の第18回共産党大会では、2020年のGDPを2010年の2倍に増やすという数値目標を設定。同時に1人当たり年間収入が2300元(2011年時点の不変価格。2019年末時点の物価で換算すると3218元=約4万8270円)未満の絶対貧困人口をゼロ化することも目指している。

2つの目標のうち、前者の達成は難しい。実現するには2020年も前年比5.6%以上の経済成長が必要だが、新型コロナの影響で中国の今年の成長率はマイナスになりかねないからだ。今年の成長率目標を示さなかったことで、その達成は断念されたとみられている。それだけに、貧困撲滅の重要性は非常に高まっている。

2013年には8249万人いた絶対貧困人口は、2019年末に551万人まで減った。2019年には1109万人を減らしたので、年内の完全解消も決して高いハードルではない。中国の世界の貧困削減への貢献度は圧倒的で、中国共産党にとっては大事な看板だ。

絶対貧困層は数も限られており、とくに都市部の住民はあまり身近な問題とは感じないだろう。今回の首相発言が大きな反響を呼んだのは、月1000元、つまり年収1万2000元という数字が多くの人にとってよりリアルで、かつ全人口の4割にあたる6億人もいるというボリュームに驚いたからではないか。「この6億人とはいったいどんなグループか」という議論が、首相会見の直後から中国のメディアで盛り上がった。

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