中国に衝撃「月収1.5万円が6億人」の貧しさ 家計資産1億円超える大都市との巨大な格差

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国家統計局が発表した2020年1~3月期の1人当たりの可処分所得の中央値は7109元(10万6635円)だった。つまり14億人のうちの上からも下からも7億人目にあたる人の所得がひと月当たり2370元(3万5550円)ということだが、この数字と「月収1000元」との乖離はかなり大きい。

また、最低賃金は全国で最下位の安徽省でも月1180元(1万7700円)である。最高は北京市と広東省深圳市の月2200元(3万3000円)だ。最低賃金の対象は主に「農民工」といわれる農村からの出稼ぎ者だが、人手不足のなかで彼らの収入も上がっている。北京での最新の調査では、1980年以降に生まれた「新世代農民工」の平均月収は5850元(8万7750円)に達している。短大卒以上が35.2%と学歴も高く、権利意識も強い「新世代」の月収は70年代生まれ以上の「旧世代」より896元(1万3440円)も多い。では月収が1000元しかない6億人とは、どんな属性の人々なのか。

「月収1000元」層のほとんどは農民

中国政府は1人当たりの可処分所得を基準に、全人口を5等分して調査しているが、2月に国家統計局が発表した2019年のデータでは、最も所得が低い20%の「低所得層」の平均年収は7380元(11万0700円)、次に所得が低い20%の「低所得よりの中間層」は平均年収1万5777元(23万6655円)だった。この点から、「4割が月収1000元=年収1万2000元」という首相発言とつじつまが合わない、という指摘が中国では相次いでいた。少なくとも、「低所得よりの中間層」を月収1000元というのは無理がある。

今回、国家統計局は5月の経済統計の「解説」のなかで、「下から4割にあたる計6.1億人の年平均収入は1万1485元(17万2275円)だった。月当たりにすれば1000元弱だ」と説明。6億人全部が月収1000元というわけではなくあくまで平均だと、当然のことを強調することで幕引きを図った。一応説明はつくが、李首相の発言自体、「1000元」「6億」というインパクトのある数字を並べた印象操作という感は否めない。

では、この6億人のプロフィールはどんなものなのか。北京師範大学・収入分配研究院は7万件のサンプル調査から、平均月収が1090元(1万6350円)以下の層が中国には6億人存在し、全人口の42.85%を占めていると推定している。その75.6%が農村に住んでおり、地域的な分布では中部が36.2%、西部が34.8%となっている。

収入分配研究院の李実所長によれば、「月収1090元以下の6億人」には老人や子供も含まれ、最低賃金の対象となるような賃金労働者はその4割に満たない。平均教育年限は9.05年で、日本でいえば中学卒業。学歴が小学校卒業以下の比率が43.7%にのぼり、9.6%は字が読めない。

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