コロナ感染者隔離のための検査は「地獄への道」

検査を受けたくない人への「強制」につながる

PCR検査を国民全員に受けさせるということの意味を考えてみよう。写真は中国・武漢(写真:REUTERS/Aly Song)

新型コロナウイルス禍に出口らしきものが見え始めたとたん、国民全体をPCR法その他で検査し、感染が疑われる人を隔離することで経済を立て直そうという提言が出てきた(小黒一正・関山健『新型コロナ・V字回復プロジェクト~「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に』5月)。

提言は、今の日本の問題は、ウイルス禍に対するに「命か経済か」の二者択一から離れられないでいるところにあるとする。だから、ここで大きな経済資源を投じて国民全体を検査する体制を整備し感染者を完全に隔離する体制を整えれば、非感染とされた人は安心して経済活動にいそしめるはずだ。つまり「命も経済も」という出口があるはずだ、そう主張するのである。

だが、すでに反論として書いたように(『「自由」を危機にさらす「全員PCR検査論」の罠』)、筆者はこれに反対である。理由は、検査と隔離だけでは感染爆発を止められないだけでなく、こうした提言が実施されたときに生じる自由あるいは人権への危機を予感せざるをえないからである。今回は、やや具体的に説明しよう。

個々人がどう動くか考えてみよう

あなたが、何かのきっけで新型ウイルスへの感染を心配する状況に至ったとする。すでにウイルス感染症への特効薬のようなものが開発されていて、それを処方してもらえばウイルスが完治する、あるいは、完治とまで行かなくても軽症化すると知っていたら、ぜひ検査を受けたいと望むだろう。検査結果が陰性なら安心するだろうし、陽性なら薬を処方してもらえるはずだからだ。

しかし、特効薬がなく陽性と出ても「隔離」されるだけとわかっていたら、あなたは検査を受けることを躊躇するのではないだろうか。決定的な治療薬がない状況での隔離は、あなたの命を守るためのものではなく、あなた以外の人の命を守るためのものでしかないからだ。

もちろん、家族や親密な友人たちがいて、あなたが彼らの命を守りたいと思えば、進んで検査を受けようとするかもしれない。しかし残念ながら、国民全員検査論者が頼りとするPCR検査の精度はあまり高くない。PCR検査が感染してしまっている人を非感染つまり陰性としてしまう確率は、検査を受けるタイミングにもよるが、20%とか30%もあるとされる。

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