「行政検査」という仕組み
――ちまたでは、PCR検査をめぐる議論がまだ続いています。専門家会議の副座長で地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏は、5月4日の記者会見で日本のPCR検査件数が少ない理由を挙げました。
確か6つの理由を挙げられたと思いますが、そのうち、最初に挙げたのは、PCR検査が「行政検査」という仕組みで行われているという点です。
――行政検査とは、どういう仕組みですか。
1998(平成10)年に伝染病予防法を引き継ぐ形でできた感染症法(正式名称は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に基づく仕組みです。この法律は、感染予防、蔓延防止という目的とともに、患者さんの検査そして医療を行うために作られました。
行政検査は、まず検査をする主体が限定されているのが特徴です。まず保健所で検査をして検体をとって、地方衛生研究所に送って、そこが分析して陽性評価を決める。検査とともに、陽性の人を感染症指定の医療機関に送る。そういうシステムです。
――その仕組みに問題があるのですか。
新型コロナウイルスは、非常に感染力が強く、感染が速い。簡単にうつってしまう。潜伏期間はインフルエンザよりも長いかもしれませんが、症状が出てから急速に悪化、重症化することがある。これまでの感染症、例えばSARS(重症急性呼吸器症候群)より多くの人に感染してしまう。そうして保健所で対処できるキャパシティーを超えて感染が広がってしまった。
保健所が検査して、検体を衛生研究所に送って結果を待つということが、追いつかなくなってしまいました。
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