「何をしても噂になる」田舎を逃れた男性の絶望

父と祖父が「地元の校長」というしがらみ

「でも中3の春からは、何事もなかったように学校に行くようになったんです。なんで行けるようになったのかは自分でもわからない。うまく説明できないんですけれど」

聞くと小学校の頃から友達は多く、いじめなどもまったくなかったそうです。おそらく学校へ行けなかったのは、教員たち(父親を含む)の間の、微妙な緊張感を感じ取っていたからでしょう。

高校は地元の進学校に入りましたが、入学式だけ出て、すぐ退学することに。これもなぜ行けなくなったのか、自分ではよくわかりません。

「なにか周囲に対して、違和感や疎外感があって。自分が浮いているような感じ。友達とは毎日遊んでいたんですけれど、自分だけ何か違うな、という感じがありました」

ランニングも犬の散歩も、なんでもネガティブな噂に

当時、祐樹さんが抱えた違和感や疎外感には、「祖父や父が地元で有名な教育者だったこと」が影響していたようです。

「父も祖父も、非常に独特な世界観をもっていて。自分の子どもはとにかく優等生でなきゃいけない。歯を食いしばって勉強して、スポーツをやって、先生の言うこと、親の言うことを『はい、はい』って聞いて。姉はそれが完璧にできる人だったので、僕のときは『なんで急に問題ばかり起こすんだ』という感じだったと思います」

また冒頭にも書いたように、祐樹さんはどこへ行っても「安村先生のお孫さん」「息子さん」といわれ、特別扱いされるのが常でした。

「もう本当に、どこへ行っても言われるんですよ。東京のコンビニから、実家へ荷物を送ろうとしたときさえ、店員の女の子が『××(地元の地名)ですか? 安村さんって苗字、よく聞きますよ。安村先生って、いましたよね』と言われたこともあります」

東京に来てまでこうなのですから、地元ではいうまでもありません。

「小学校のとき寒い日に、なんとなく思いつきで袖なしのランニングシャツで友達とそばを食べに行ったんですね。そうしたらすぐに『安村さんのところは、こんな真冬でもランニングを着せてスパルタ教育だ』っていう噂がすぐに広まって。母親から『あんた、ランニング着てそば食べたでしょ』と言われました。

散歩させていた犬が車にひかれそうになって叱ったときもすぐ噂になり、『安村さんのところの息子さんが犬をいじめてる』って。なんでも、ネガティブな噂になってしまうんです(苦笑)」

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