オンライン講義がリアルの代替に留まらない訳 コロナ禍で使ってみたら新しい可能性が見えた

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だから、オンライン中継はやはり代替物という性質が強いのではないでしょうか?

しかし、講演やセミナーでは、臨場感というのは、あまり大きな問題とはなりません。

講演の場合には、リアル方式では、通常は講師から受講者への一方通行になる場合が多いのです。

日本の場合には、とくにそうです。

「講義・講演・セミナーは、講師の話を一方的に聴くものだ」という考えが強く、講師と受講者の間のインタラクションはあまり多くはありません。

学校の小さな教室であれば、質問もしやすいかもしれません。しかし、大教室となると質問するのは難しくなります。

講演ということになれば、ほとんどの場合に、講師からの話を一方的に聴くということになります。質問があるとしても、主催者が代表して行う場合が多いのではないかと思います。

私は、アメリカでの1時間の講演が、最初に15分ほど話して、残りのすべてをQ&Aにあてることになっているのが、大変効果的だと思ったことがあります。

そこで、日本でも同じことをやろうとしたのですが、「15分しか話さないのでは手抜きだ」と言われてしまいました。

オンラインセミナーであれば、事前に通知を出す際に、内容の概要を送り、あらかじめ質問を受け付けることができます。

質疑の時間を長くすることも可能に

したがって、これまでの講演会より質疑の時間を長くすることも可能です。うまくやれば、1対1のインストラクションを受けているような感じになるのではないでしょうか?

これが、YouTubeを使うセミナーや講義との大きな違いです。YouTubeは、一種の放送なのです。基本的に、インタラクションという機能がありません。

参加者が多くなった場合に、すべての質問に対して十分な時間をとることが難しい場合もあります。こうした場合においても、何らかの方法でコミニケーションを行うことは可能だと思います。

私は始めたばかりですので、いろいろ手探りで試行錯誤している段階なのですが、新しい可能性が広がりつつあることを強く感じています。

オンラインセミナーは、コロナ期だけのリアルセミナーの代替物ではなく、新しい形のセミナーになるでしょう。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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