テルモ社長が明かす人工肺「ECMO」増産の舞台裏

コロナは医療機器「公定価格」見直しの好機

――さらに増産する余地はありますか。

ECMOの需要ピークは3月から4月にかけてだった。当時は医療現場でフル回転で使われていたが、感染者数の減少とともに稼働台数は減ってきている。装置本体は使いまわしができるので、一定量があれば医療現場の要求に応えられる。今は受注残をこなしている段階で需要は平準化していくだろう。

――ECMOを使いこなすには高度な専門知識を要するため、扱える医療従事者の不足が指摘されています。

佐藤慎次郎(さとう・しんじろう)/1960年生まれ。1984年現JXTGエネルギー、99年現PwCJapanグループ、2004年テルモ入社。11年心臓血管カンパニープレジデント。17年4月から現職。(撮影:今井康一、撮影は2017年)

ECMOは普段、特定の病院で年に数回しか使われないケースが多い。そのため、一部の限られた医師しか扱えず、使うには時間と手間もかかる。そうした課題が今回改めて明らかになった。

日本で最初にECMOを発売したのはテルモで、長い時間をかけて発展させてきたという自負もある。次世代の商品開発を進めていくうえで、もっと使いやすく、役立つ製品にしていきたい。

加えて、日頃から(ECMOを)扱える人を増やし、いざというときに対応できるような教育システムも必要だ。これはカテーテルなど他の医療機器も同様だ。われわれは神奈川県に医療トレーニング施設を持っており、日頃から多くの医療関係者が手術のシミュレーションや病院のレイアウトの研究などに使っている。将来的には、そこでも感染症対策の総合的なトレーニングやシミュレーションを提供できないかと考えている。

医療機器の安全保障を考えよ

――その一方、 日本は医療機器の輸入が多く、海外メーカーへの依存度が高いため、今回のような危機が起きると医療機器が不足する恐れがあります。

日本で使われている医療機器のうち半分以上が海外メーカー製だ。一般的に、CTなどの診断装置は国内(メーカー)が優勢だが、人工呼吸器を含め、開発リスクの高いハイエンドの治療系医療機器は海外メーカーが強く、輸入割合が高い。アメリカの企業を、日本やヨーロッパなどの企業が追いかけているのが近年の構図だ。

国はかつて、医療機器業界の自立化と医療機器の発展をうたった「医療機器産業ビジョン」を策定するなど、輸入比率の高さを問題視していた時期もあった。だが、テルモやオリンパスを筆頭に、日本メーカーも国際的に活躍できるようなところまで来ており、以前と比べて日本の医療機器メーカーの国際的な地位は高くなった。

最近は医療機器の輸入超過問題が大きくクローズアップされることはあまりなく、医療機器面での国家安全保障の問題は卒業した話のように扱われていた。ただ今回のコロナ禍でやっぱりもう1回考える必要があることがわかった。日本の医療機器の基盤を強くして、国際競争力を高めていくことが大切だ。

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