ロケ場所探しから警官のご機嫌取りまで……低予算の映画をプロデュース、撮影現場ドキュメント《ハリウッド・フィルムスクール研修記11》

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低予算映画でお金の価値を知る

予算300万円程度の学生映画は、30秒で1億円を軽く超える予算でコマーシャルを製作していた広告会社時代に比べれば、はるかに小規模です。しかし、たくさんのことをプロジェクトの過程で学びましたし、規模が小さいからこそ学んだこともあります。

それは、「おカネの正しい使い方」とでも言うのでしょうか。切り詰めた予算だからこそ、10ドル単位でより安い業者を探したり、本当に映画の成功のために必要なものは何かを考え抜いたうえで予算の配分をしたりする必要があります。

広告会社時代に無駄遣いをしていたというわけでは決してありませんが、低予算映画を通じて、サービスやモノに対し、「支払う金額に見合った価値があるか」を、常に考える癖がついたように思います。

私の知り合いで、ニューヨークのミッドタウンに豪邸を持ち、MOMA(ニューヨーク現代美術館)に多大な寄付をしているようなユダヤ人の投資家がいます。彼は大柄な体型にもかかわらずどんな長いフライトでも決してファーストやビジネスクラスには乗らずエコノミーと決めているそうです。十数時間の快適さのために50万円以上の追加出費をするのは、彼のポリシーに反するのでしょう。

今回の撮影では、決して多くない予算のなかで優先順位を明確にし、「6日間5ロケーション」というヘビーなプロダクションを可能にできたことは大きな自信になりました。

さて、これまでお付き合いいただいた研修記も次が最終回です。次回は私をフィルムスクール留学へと導いてくれた「メンター」について紹介しつつ、企業や組織に頼らない時代のメンターシップのあり方について書いてみたいと思います。

木野下 有市 (きのした・ゆういち)
 1980 年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒業後、広告会社にて大手飲料・製薬メーカーの広告キャンペーン等を担当。2008 年8 月よりアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI/米国映画協会)大学院にて映画プロデュースを専攻。ギャガ会長・東京国際映画祭チェアマン依田巽氏の寄付で設立されたAFIの奨学金を受け、芸術学修士の取得を目指して勉強中。

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