在宅勤務がコロナ後も全然衰えなさそうな訳 利便性や効果が実証されオフィス需要にも影響

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一方で、在宅勤務にまったく問題がないわけではありません。

日本では、住宅事情が良好でないため、自宅での仕事には、さまざまな障害があります。とくに、学校が休校になっていることから、子供が仕事の邪魔をする場合が多いと言われます。

また、オフィスにおけるデスクトップPCほどセキュリティー面で保護されていない可能性がある家庭のPCが攻撃を受ける状況が生じています。

こうした問題は、自宅を仕事場にするのでなく、各地にサテライトオフィスを分散配置し、そこで働く形態をとることによって解決しうるでしょう。

「いるか族」の世界からの脱却

日本では、さらに「働き方」の基本に関わる問題があります。

厚生労働省の調査によると、テレワークの実施はオフィスワーク中心の人でも全国平均で約27%にとどまりました。東京でも約52%です。

日本で在宅勤務があまり進まないのは、技術的な理由によるというよりは、「日本型の働き方」による面が大きいと思われます。在宅勤務で働く場合に最も重要なのは、成果主義、ひいては能力主義に転換しなければならないという点です。

ところが、日本の組織では、これまでは、成果よりもオフィスにいるかどうかが評価されていました。上司に「おい」と呼ばれたときに、「はい」と答えられるかどうかが重要だったのです。

テレワークになってビデオ会議が導入されても、中間管理職は、「部下がPCの前にいるか?」をチェックするのに躍起になっています。こうした中間管理者を「いるか族」と読んでもいいでしょう。

こうした人々がはびこる組織から脱却できるかどうかが、日本における在宅勤務の成果を決めることになるでしょう。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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