減損が明暗を分けたが、効率性でもみても三井住友が勝る。三菱UFJの経費率(営業経費÷業務粗利益)は2020年3月期で70.2%なのに対し、三井住友の経費率は62.8%とかなり低い。
グループ傘下の銀行単体ベースで比較すると、貸出や手数料収入など銀行の主要な業務の状況を示す「業務粗利益」は三菱UFJ銀行が1兆5462億円、三井住友銀行は1兆4120億円と大差ない。一方、経費は三菱UFJが1兆1509億円、三井住友は8080億円と大きく違うため、銀行の稼ぐ力を表す「業務純益」は三井住友が6039億円と三菱UFJ(3952億円)の1.5倍ある。
三菱UFJフィナンシャル・グループは、「経費率60%程度」を中長期の目標に掲げており、その達成には国内銀行部門をテコ入れする必要がある。現状、2023年度までに従業員約6000人を自然減で削減、国内店舗は約500店のうち35%を削減(いずれも2017年度比)する方針だが、その削減量を増やす可能性もある。
亀澤氏は社長就任前、三菱UFJのデジタル化を担うCDTO(チーフ・デジタル・トランスメーション・オフィサー)と務めていたデジタル畑だ。今後、事務の自動化やAI導入を通じた業務量削減とそれに伴う人員・店舗の削減を着実に進め、どれだけ効率性を高められるか。まさにその経験と手腕が問われる局面だ。
「いい案件があれば積極的に検討」
一方の三井住友の課題は、これまで積み上げた資本をどう活用するかに移っている。三井住友の太田純社長は「新興国で第2、第3の三井住友フィナンシャルグループを作っていく」と語ってきた。2019年2月に連結子会社化したインドネシアの年金貯蓄銀行・BTPN(バンク・タブンガン・ペンシウナン・ナショナル)のように、現地企業を買収しつつ収益基盤を拡大する構想だ。
コロナウイルスの影響で資産価格が下落していることも踏まえ、今回の決算会見で太田社長は「いい案件があれば積極的に検討していきたい」と語った。どの地域に次の一手を繰り出すのかが注目される。
上位2社がしのぎを削る中、みずほは遅れをとっている。2019年3月期に新システムの減損などから約6800億円という巨額減損を計上していたため、2020年3月期は増益を果たしたものの、純利益は4485億円にとどまる。
ただ、これまで新システム移行(2019年から全面稼働)の影響で遅れていたコスト削減は順調な滑り出しを見せている。2020年3月期は経費の削減額を580億円程度と見ていたが、最終的には890億円まで積み上がった。2019年度に始まった5カ年の中期経営計画では後半2年で利益を一段と高めていく方針で、トップラインの拡大がカギを握る。
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