日銀がコロナ不安の中で繰り出した苦肉の策 「リーマンショックとは違う」と総裁は楽観?

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3月14、15日の中央銀行同士のやり取りを問われ、黒田総裁は16日の会見で、「散髪をして、本屋に行っていた」とピント外れな言及もあった(撮影:風間仁一郎)

「リーマンショックとは違う」。楽観していて緊張感がないのか、日本銀行の黒田東彦総裁は会見で何度も笑みを見せた。それでも、コロナショックにより国内外の市場の不安は確実に増幅されている。

日銀は3月16日、定例会合(3月18、19日)を前倒しし、追加の金融緩和策を決定した。異例の動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急利下げに対応するものだった。FRBは3月15日、日曜日にもかかわらず緊急会合を開き、1.0%の利下げに動いた。これで政策金利目標は0~0.25%となり、事実上のゼロ金利政策に戻った。

大幅利下げで日本と米国の金利差が縮小し、ドル安円高の加速が危惧された。コロナショックによる不安が増幅され、為替の急激な動きも重なると日本企業の収益に影響が及ぶ。日銀も静観できない状況だった。

ETFの買い増しをアピール

今回日銀が導入した施策は大きく分けて3つある。1つ目は資金供給の実施だ。積極的な国債の買い入れを行うほか、FRBや欧州中央銀行(ECB)などと協調し、ドル資金を供給する。

日銀は3月17日、金融機関に米ドルを供給するオペを行い、323億ドルの応札があった。3月3日、10日の米ドル供給では応札がゼロだったが、金融機関に予防的な手当ての動きが出始めている。

2つ目は、企業金融支援だ。民間企業債務を担保に最長1年の資金をゼロ金利で民間金融機関に貸し出し、社債やコマーシャルペーパーの買い入れも合計2兆円増やす。すでに1.6兆円の金融支援を発表している政府と歩調を合わせた。これらの施策はおおむね事前に予想されていたものだった。

今回、唯一のサプライズとなったのは3つ目。株価下落による市場のリスク回避姿勢に対応するために、ETF(上場投資信託)の買い入れを倍増する措置だ。

従来、保有残高を年間6兆円増加するペースでETFを買い入れていたが、当面、年間12兆円を上限に買い入れを積極化する。これまでも、「買い入れ額は上下に変動しうる」としており、買い入れペースを上げて、年間6兆円を上回るようにすることもできた。

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