新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。それに伴って、金融市場も乱高下を繰り返し、すでに混乱を極めています。アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月13日、ホワイトハウスで記者会見し、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、非常事態を宣言しました。最近では「コロナショック」という表現も使われるようになり、今後の問題深刻化への懸念も高まっています。
これまでの過去の様々な危機との比較もなされるなかで、ウイルス感染拡大を直接の要因とするコロナショックは、2008年に起きた金融危機としての「リーマンショック」とは性格が異なるという指摘も少なくありません。
一方で、私自身は、1997年に起きた「アジア通貨危機」を当時の勤務先であった東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)のアジア拠点で直接経験していますが、その経験から、コロナショックは、危機管理の観点からは、金融危機さらには経済危機にまで陥る可能性があると考えてプロアクティブに準備を進めておくことが必要であると考えています。このようなことを背景として、本稿では、コロナショックが金融危機や経済危機を引き起こすリスクシナリオやそのリスク要因について考察したいと思います。
厚労省による対策と基本的な考え方
下記の図表は、厚生労働省が2月24日付で発表した新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第3回)の資料の抜粋で、同感染症対策の目的やその基本的な考え方がまとめられたものです。
(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
私は『「日本のコロナ対策」間違えてはいけない戦い方 医療崩壊防止が第一、批判応酬しても仕方ない』(2020年3月9日配信)において、「クリティカルシンキング」「ストラテジー」「医療ビジネス論」の3つの複合的な視点からコロナウイルス対策で最も重要な問題について論じました。
厚労省が採った対策やその基本的な考え方は、上記視点とも合致するものであると分析されます。同図表にある通り、日本政府は「流行のピークを下げる」×「患者の増加のスピードを抑える」という2つの軸に注力しており、現時点においては先進国のなかでも比較的プロアクティブな対策を施してきている国の1つではないかと観察されます。
吉村洋文大阪府知事は、3月11日、大阪府内の新型コロナウイルス感染者の入院先を症状やリスクに応じて振り分ける司令塔組織「入院フォローアップセンター(仮称)」を立ち上げる方針を明らかにしました。感染者の大半が軽症か無症状で専門の医療機関に入院しているという現在の状況を、重症者の病床を優先的に確保、軽症や無症状の人は一般の医療機関で受け入れるように運用を見直すという内容です。
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