コロナショックが招く「経済危機」最悪シナリオ 需要、供給、金融を揺さぶり悪循環に入るかも

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これら「需要ショック」と「供給ショック」とが相まって、コロナショックはすでに「金融ショック」を引き起こしています。

まず為替については、米ドルも乱高下を続けている一方で日本円に対して先月下旬から見ると急激な下落も記録しました。米ドル下落時の要因としては、安全資産としての米国債が買われたことによって米国長期金利が低下、日米の金利差縮小によるドル円の下落といったことが挙げられます。

もっとも、基軸通貨としての米ドルの信用力が潜在的に弱まってきているという可能性も指摘できるのではないかと思います。これはコロナウイルス感染拡大終了後も見逃せない点になるのではないかと思います。米ドルの乱高下以上に懸念されるのが新興国通貨の下落です。特に後で詳しく述べるように、東南アジア通貨や長期債を発行している産油国等の為替が下落していることは要注意です。

金利については、先に述べたように、米国債が買われたことに伴ってアメリカの長期金利が急激に低下しています。昨年7月までは2%以上、それ以降も1.5%以上で推移していましたが、先月下旬から急激に下落し、今週にはいったん0.5%程度までの下落を記録しました。アメリカの金利が低下したことで日本や欧州でもさらなる金利低下が予想されていますが、すでにゼロ金利となっていることで金融政策としては打つ手に乏しい現状です。金融緩和への余地がもっとも大きかったアメリカですが、足元では上記水準までもの金利低下という状況にもあって、すでにマイナス金利政策が真剣に検討され始めています。

ハイイールド債の価格が低下

株式市場が乱高下を続け混迷を深めていることは、ここであらためて記述する必要もないと思いますので、次に債券市場について見てみましょう。アメリカのハイイールド債(利回りが高く信用格付けの低い債券)はアメリカのシェール等のエネルギー関連企業がかなりの構成比率を占めています。これらのハイイールド債は、コロナショックに伴う原油価格下落の影響を直接的に受け、価格が低下しています。また、サウジアラビア、オマーン、ナイジェリア、アンゴラといった産油国が発行する長期債の価格も大幅に下落しています。特に国の格付が低いナイジェリアの動向には注意が必要です。

原油については、3月9日午前の取引で原油価格が1991年の湾岸戦争以降で最も大幅な下落を記録しました。コロナショックを受けて需要が大きく減退するとともに、石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成するOPECプラスが減産強化で合意に至らなかったこと、さらにはサウジアラビアがこのタイミングで増産を決定するなど主要産油国が価格戦争に突入したことが背景にあると見られています。サウジアラビアの戦略は、長期にわたって原油価格を低めに誘導することによって、アメリカのシェール関連企業をエネルギー市場から締め出すことではないかとも考えられます。したがって、原油価格が簡単に大きく上昇する可能性は小さいものと予測されます。

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